【完結】アシュリンと魔法の絵本
「この世界の人たちって、一度は旅に出るのかな?」
「どうだろう、国が違えばまた別かもよ?」

 旅に出るか、別の方法か。アシュリンはこの国から外に出たことがないのでわからないが、ラルフの言うようにいろいろな方法があるのかもしれない。

「それはそれでちょっと気になるね」
「でしょ。外国の本とか文化とか、知るとちょっと楽しいよ」
「ラルフはそういう本が好きなんだね」
「まぁね」

 ぱくりとカリフラワーを食べる姿を見て、アシュリンも自分が取り出したポトフを食べる。あれから改めて作り直したものだ。ラルフも一緒に。

「んー、やっぱりおいしい!」
「ロッティさんの手料理は、やさしい味がするよね」
「うんっ。だからおばあちゃんの料理も大好きなんだー」

 にこにこと笑う姿を見て、ラルフもつられるように笑った。

 その笑顔があまりにも自然で、がたっと椅子から立ち上がる。

「ど、どうしたの? アシュリン」
「その笑顔! ラルフのご両親に見せたら、ぜったいよろこぶよ!」

 ビシッとラルフを人差し指で()したアシュリンに、ノワールがペシッと彼女の手をしっぽで叩いた。

「人を指しちゃダメニャー」
「あ、ごめん」
「……あんまり考えたことなかったけど、今度会ったら感情を表に出せるように意識してみるよ……」
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