アシュリンと魔法の絵本
2章:アシュリンと出会い。

アシュリンとお友だち。 1話

 アシュリンはてくてくと街道(かいどう)を歩いていた。

 そばにはパタパタと忙しい本と、黒猫のノワールが一緒だ。村を出てから一週間ほど()ったが、特に困ることなく旅をしている。

「……あれ?」

 街道に、なにかが落ちている。それなりに大きそうだ。

 ごしごしと目をこすって、ノワールと本に話しかける。

「ねぇ、あそこになにか落ちてない?」

 街道を指さすと、ノワールが「……落ちてるね」とアシュリンの言葉に答えた。

『人のようですよ?』
「えっ、たいへん!」
『人と……使い魔、のようです』

 アシュリンは本の言葉を耳にして、急いで駆け寄った。ちょっとだけ息が上がってしまったが、それどころではない。

「だいじょうぶですかっ?」

 遠目だったからわからなかったが、本が伝えた通り、人と使い魔が街道で倒れていた。アシュリンはしゃがみ込んで声をかけたが、反応がない。ドクンドクンといやな音を立てる鼓動を落ち着かせようと、何度か深呼吸をしてから再び声をかけた。

「しっかりしてください! だいじょうぶですか!」
「……お嬢さん、ちょっと力を貸してくれないかい?」

 おそらく倒れている人の使い魔が、のっそりと声をかけてきた。その声が低くて、アシュリンはびくっと肩を震わせる。

「魔力をわけてくれ」
「魔力を……? どうやって?」
(ワレ)の身体に触れて、注いでくれるだけでいい」
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