アシュリンと魔法の絵本

アシュリンとお友だち。 2話

「まぁ、いいけど……それじゃ、とりあえず休憩(きゅうけい)スペースまで行こうか。きみはこの辺に(くわ)しいの?」
「ノワールが詳しいの。わたしは詳しくないよ」

 ひょいとノワールを抱き上げて、ずいっとラルフの前に出した。彼はじっとノワールを見て、そうっと手を伸ばして頭を()でる。

「それはかしこい使い魔だね」
『あのー、私のこと忘れていませんかー?』

 しょんぼりとした声を上げるのは、本だった。ずっとアシュリンとラルフの近くをくるくると回っていたが、まったく気にされていないことに気付いたのかどこか哀愁(あいしゅう)を漂わせてアシュリンの顔の近くにきた。

「ごめんごめん。フォーサイス家ってことは、本の旅だね」
『その通り! ご主人さまの物語を(つむ)ぐのが、私の役目!』
「一日一回、魔力を流すだけなんだけどね」
「休憩スペースについたら、見てもいい?」
「いいよ!」

 そんなわけで、アシュリンとラルフは一緒に歩き出した。目的地はこの先にある休憩スペース。

 ノワールはぴょんと地面に着地し、自分の足で歩き出す。

「そういえば、きみはどうして空じゃなくて街道を歩いているの?」
「人間は足があるんだから、歩くべきだっていうフォーサイス家の教育方針!」
「なるほど。素晴らしい教育方針だね」

 ラフルに家の教育方針を()められて、アシュリンはえへへ、と嬉しそうに表情を綻ばせた。
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