アシュリンと魔法の絵本

アシュリンの旅立ち。 2話

「フォーサイス家、全員リビングに集合!」

 トレッサの声が家中に(ひび)(わた)った。ノワールはうるさそうに耳を塞ぐのを見て、「お、おばあちゃん……?」とアシュリンが彼女に声をかける。

「アシュリン、家族会議の時間だよ!」
「か、かぞくかいぎ? どうして?」
「アシュリンが、本に選ばれる日がきたからさね」

 じっと本に視線を(そそ)ぐトレッサに、アシュリンも本に視線を落とす。

 あれほど興奮したように動き回っていた本が、大人しくしていることにアシュリンはゆっくりと息を吐いた。

「とりあえず――リビングに行こうね」
「うん」

 トレッサはアシュリンに手を差し出す。彼女は迷うことなくその手を取ってリビングまで足を進める。

 大きくてしわくちゃなトレッサの手は、アシュリンの手を包み込む。

(おばあちゃんと手をつなぐの、好きだなぁ)

 ほわほわと温かい気持ちになって、アシュリンはこっそりと笑みを浮かべた。

 リビングには祖父のケヴィン、母のホイットニー、父のグリシャ、妹のエレノアがすでに待っていて二人がくると一斉に顔を向ける。

「トレッサさん、どうしたんですか?」

 いつも穏やかで優しい祖父のケヴィンが、トレッサに問いかける。彼女はそっとアシュリンの手を離し、代わりにぽんと背中を押した。
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