【完結】アシュリンと魔法の絵本
「ラルフ!?」
「ぼくがとってきてあげる!」

 ひらひらと手を振ってずっと上までいってしまう。どうしよう、と使い魔たちを見ると、ノワールもルプトゥムも興味がないようで、使い魔同士で仲良くおしゃべりをしていた。

「わ、わたしもいくー!」

 アシュリンもほうきを取り出して、ラルフを追いかけた。ふわっとやさしい風が彼女の頬を()でて、空を飛ぶ速度が上がる。

「わぁ!」

 いつもよりも(いきお)いよく飛んでしまい、アシュリンはくるくると夜空を()った。

「あれ、アシュリンもきたんだ?」
「おいついちゃった……」

 夢だとわかっていながらも、目が回る。さっきまでほうきのスピードに振り回されていたから、ようやくスピードが落ち着いてラルフのとなりを飛べるようになり、ほっと安堵の息を吐く。

「なんだかすごい勢いだったね」
「うん、わたしもびっくり!」
「アシュリンの魔力が増えのかもしれないね」
「魔力増えるとこうなるの?」

 それはそれで大変だ、とアシュリンがぎゅっとほうきを(にぎ)る。その様子を見てラルフはそっと手を伸ばして星に()れた。

「最初のうちは、いつもと同じくらいの魔力を出しているつもりでも多く出しちゃうから、注意しないといけないんだって」

 ラルフはごそごそとむなポケットから小瓶を取り出して、星をその中に入れる。

「プレゼントだよ」

 ラルフはにこりと笑って、小瓶をアシュリンにそっと渡す。

 ――そこで、目が覚めた。
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