【完結】アシュリンと魔法の絵本
 アシュリンは誰かと一緒に食事をすることが好きだ。ラルフはほぼ一人で食べることが多かったので、彼女と一緒に食べることは新鮮で不思議な気持ちになる。

「それに、今日はこのこんぺいとうもあるしね! かわいいよね、カラフルで」
「――ぼくにもくれるの?」

 ラルフは意外そうに目を丸くする。アシュリンも不思議そうに彼を見て、「あげるよ」とポケットからこんぺいとを取り出してテーブルの上に置いた。

「こんぺいとうって、あまいおかしなんだって。あまいもの、きらい?」

 アシュリンの問いにラルフは首を横に振る。良かった! と笑う彼女にラルフはじっとこんぺいとうが入った小瓶を見つめる。

「――世の中不思議なこともあるんだなぁ……」

 あとで自分の荷物を確認しようと心に決め、ラルフはアシュリンが用意してくれた食事に手を伸ばす。

 アシュリンもサンドウィッチに手を伸ばして、はむっとかじりつく。にこにことおいしそうに食べる。ハムとチーズのシンプルなサンドウィッチは、彼女が初めて作った料理でもある。

 とはいえ、ハムとチーズは母のホイットニーが切り、アシュリンはパンにバターを塗って具材を(はさ)むだけという簡単なことしかしていないが、『小さなことからね』とホイットニーに言われているので、気にしていない。

 このサンドウィッチは、旅立ちの日にホイットニーが作ってくれたものだ。

 魔法のリュックに入れておけば、いつでも食べられるからお楽しみに取っておいたもの。もぐもぐとリスのように頬をふくらませて食べる姿を、ラルフはどこか感心したように(なが)めている。
< 62 / 141 >

この作品をシェア

pagetop