【完結】アシュリンと魔法の絵本
「使い魔って、そんなことまで覚えているの?」
「生まれたときからずっと一緒だから、たいていのことは覚えてるにゃん」

 アシュリンはガツンとテーブルに()()した。あまりにも勢いよく突っ伏したので、すごい音がして、ラルフとルプトゥムが目を丸くして彼女を見る。

「だ、だいじょうぶ……?」
「だいじょうぶでだいじょうぶじゃない……」

 それはどっちだろう、とラルフがルプトゥムを見た。ルプトゥムは首を左右に振ったので、ラルフは眉を下げて椅子から立ち上がり、アシュリンに近付いた。

「そんなにショックだったの?」
「だって、わたし赤ちゃんの頃のきおく、ないよ……?」
「たいていの人はないよ。ぼくだって生まれたばかりの記憶はないし」
「そうなの?」

 こくりとうなずくのを見て、アシュリンは「よかったー!」とそのままテーブルの上でぐでっとする。

「おぎょうぎわるいにゃん」

 ペシッとアシュリンの後頭部を肉球で叩くノワールに、「はぁい」とテーブルから身体を離して座り直し、食事を再開した。もぐもぐと食べ始めるのを確認してから、ラルフはさっきまで座っていた椅子に戻った。
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