【完結】アシュリンと魔法の絵本
「いきなりぼくの話題になったから、びっくりしちゃったよ」
「ごめんごめん。でも、なんだか気になって!」
「――大人しい子だったな、赤ん坊の頃から。旅を始めてから、本来の性格になっているような気がする」
「そうかなぁ、もとからこんな感じだと思うけど」

 ラルフはハンカチを口元から離して、魔法を使った。すぐにきれいになったハンカチをしまい、軽く頬をかいた。

「ラルフは昔から『良い子』だったからな。子どもとはもう少しわんぱくになるかと思っていたんだが……使い魔として、良い子すぎてやることがないのが悩みだった」

 ルプトゥムはしみじみとつぶやく。それも、とても残念そうに。

 ラルフは「ええー」と小さな声を出したが、ルプトゥムはさらに言葉を続けた。

「夜泣きも少なかったし、ミルクを飲んでたくさん寝て、たまに泣いてという感じで、ミッチェルとアグネスがちょっと不安そうだったな」
「良い子過ぎる赤ちゃんだ……」

 妹のエレノアはどうだったろうかと考えて、たくさん泣いていたなと懐かしむように目元を細める。

 赤ちゃんは泣くことでしか自分の気持ちを伝えられないのよ、と母のホイットニーに教えられていたので、エレノアが泣くたびにこの子はどんなことをしてほしいのだろう? と考えたものだ。
< 68 / 141 >

この作品をシェア

pagetop