【完結】アシュリンと魔法の絵本
 ルプトゥムの言葉に、アシュリンはぱぁっと花がほころぶように笑った。

「ラルフは?」
「いただくよ」
「うん! じゃあ、開けるね」

 コルクのふたをきゅっとつまんで、ぐっと力を入れるとポンっと良い音がテント内に響いた。思ったよりもあっさりと開いて、アシュリンはびっくりしてこんぺいとうの入った小瓶を見つめる。

「えっと、じゃあ、お星さま、どうぞ!」

 小瓶をちょっとだけかたむけて、手のひらにこんぺいとうを取り出す。

 赤、青、黄、緑、ピンク……色とりどりのこんぺいとうを、ラルフは「じゃあ」と赤色のこんぺいとうをつまんで口に運んだ。

 ルプトゥムの分も黄色のこんぺんいとうを取り、「あーん」と口を開けるようにうながす。素直に口を開けるルプトゥムにこんぺいとうを入れると、目を閉じてもぐもぐと食べる。

 アシュリンはノワールにピンク色のこんぺいとうをあげた。彼女も青色のこんぺいをぱくりと食べた。思ったよりも固くないようで、すぐに()めた。シャリッとした食感と舌に広がる甘み。

「あまくておいしい! ……って、あれ?」

 ラルフとルプトゥム、ノワールを見てアシュリンは目を丸くする。なにか違和感があるなぁとじっと観察(かんさつ)していると、「あっ!」と大きな声を上げた。

「髪の色! 変わってる!」
「え? あ、ルプトゥムが黄色くなってる! ノワールはピンク、アシュリンは青!」
「ラルフは赤くなってるよ!?」
『どうやら食べた色に髪色が変わる、魔法のこんぺいとうのようですね!』

 本がはしゃぐようにテント内をふわふわと()っていた。みんなの色が変わったことがゆかいだったようで、左右に揺れたり、上下に移動したりとページをめくりながらその様子を楽しんでいる。

「これもとにもどるのー!?」

 アシュリンの叫びが、テント内に(ひび)き渡った。
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