【完結】アシュリンと魔法の絵本
 アシュリンは自分の頭の天辺(てっぺん)に手を置いて、アンディと自分の背を比べる。以前はもっと近かった兄の顔が、今では頭一つ……いや、二つは高くなっているので、三年のあいだになにがあったのだろうと彼を見上げた。

「いろいろあったよ。あ、あれがアシュリンの本?」
「うん! わたしの本は絵本なんだけど、お兄ちゃんの本はどんな感じ?」

 アンディはラルフから手を離し、今度はアシュリンの頭に手を乗せてわしゃわしゃとかき混ぜるように撫でる。

「ぐしゃぐしゃになっちゃう!」
「ごめんごめん。会えたのがうれしくてさ。髪は直してやるから、今はちょっと()でさせて」

 今度は両手でわしゃわしゃとアシュリンの髪を撫でているのを、ラルフとルプトゥムは少し羨ましそうにその光景を(なが)めていた。

「頭を撫でてほしいのか?」
「……どうだろう。撫でられたことってあんまりないから、わからないや」

 ルプトゥムの問いに、ラルフはゆるやかに首を振って微笑む。

 両親から撫でられたことはあるが、ラルフは一人っ子だ。兄や姉がいたらあんなふうに撫でられていたのだろうか? それとも、自分に弟や妹がいたら、彼のように撫でていたのだろうか?

 そこまで考えて、ラルフはふっと息を吐く。

「でも、ああいうふうな家族っていいよね」
「そうだな」

 アシュリンの「もー!」という声も、どこかうれしそうに聞こえた。
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