【完結】アシュリンと魔法の絵本

アシュリンとお兄ちゃん。 4話

「元気なら良かった!」

 とは一年前のことなので、現在(いま)はわからない。アシュリンはあとで手紙を書こうと心に決めて、近くに立っているアンディの服を右手でくんと引っ張る。

「ねえ、お兄ちゃんの本、読んでもいーい?」

 こてんと首をかしげて、左手を(にぎ)り顔の近くに寄せる。そのポーズはフォーサイス家でアシュリンがアンディにおねだりするときのポーズで、それをすれば兄は折れてくれると気付いていた。

「――しょうがないなぁ、アシュリンは」

 デレッとした表情を浮かべて、アシュリンの願いを聞いてくれる。家にいるときからそうだったけれど、三年ぶりに会えたからかとてもやさしい。

「おれもアシュリンの本を読んでも?」
「いいよー」

 アンディの本をがしっとつかんで、ソファに座る。そして、最初のページを開き視線を落とす。

 どうやらアンディの本はエッセイらしい。三年前に本とアンディが運命の出会いをし、旅立つ様子が書かれていた。アシュリンと同じように、兄もなにかに呼ばれるように地下室に足を進め、本と出会ったようだ。

 アンディの感じていたことや、見てきたこと――きっととても印象に残ったことが挿絵(さしえ)になっている。そっと挿絵に触れると、パッとアシュリンの目の前に浮かび上がってきて、目を丸くする。

「すごーい……」
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