【完結】アシュリンと魔法の絵本
 ニーグルムは、アンディが座っていた場所の近くで丸くなっていた。

 その上にはノワールが気持ちよさそうに眠っていて、むくりと起き上がったニーグルムから転がり落ちてキョトンとしている。

 アンディのかばんの取っ手を口でつかみ、スタスタと持ってきた。

「ありがとう」
「どういたしまして」

 かばんからバケットを取り出して、バケットをスライスしてボウルの中に入れ、ひたす。そのあいだにフライパンとバターを取り出して、火にかける。

 (ねっ)したフライパンにバターを入れて溶かし、ひたしたバケットをフライパンへ。アンディが魔法を使ったのか、ひたっていた時間は短かったが、しっかり中まで卵液(らんえき)がしみ込んでいた。

 弱火でじっくりと焼いていく姿を見ながら、おいしそうな匂いにおなかはぐぅぐぅと空腹を主張している。トングでバケットをひっくり返しながら、「アシュリンのお腹は正直だな」とアンディがやさしく微笑む。

 じっくりと焼いて、お皿を用意するとその上に乗せていく。大きなフライパンで焼いたので、二人分があっという間にできた。

 アンディがテーブルまで運び、アシュリンは自分のリュックからサラダとドレッシング、果物を取り出す。

 テーブルの上に並べると、アンディが目を丸くして彼女を見た。

「野菜、食べられるようになったんだ?」
「あれからもう、三年も()っているんだよ、お兄ちゃん」
< 86 / 141 >

この作品をシェア

pagetop