【完結】アシュリンと魔法の絵本

アシュリンとお兄ちゃん。 5話

 アシュリンの言葉に、アンディはほんの少しだけさびしそうな表情を浮かべて「そうだった」と頬を人差し指でかく。

 三年のあいだにフォーサイス家でもいろいろあったのだと感じ、その変化を見ることができなかったことに対してどこか申し訳なさそうに見えて、アシュリンは食べる前にアンディにぎゅっと抱きついた。

「お兄ちゃんがいなくてさびしかったけど、わたしたち、家族で支え合って過ごしてたよ。わたしも旅立っちゃったから、きっとみんなさびしいって思ってくれていると思う」

 そこで一度言葉を切り、すっと顔を上げてアンディの目を見つめながらにこりと微笑んだ。その微笑みに、アンディは幼かった妹が大きく成長したことを実感し、彼女の頭を()でる。

「――でもね、お兄ちゃんがよく手紙をくれたから、さびしさをごまかせたの。わたしもたくさん手紙を送ったよ! みんなで読んでくれているみたいで、『アシュリンの旅が良いものになりますように』ってお返事のたびに書かれているんだよ。お兄ちゃんもじゃない?」
「……そうだな、確かに、そうだ。三年ですっかり大きくなったんだなぁ、アシュリン。なんだかうれしいよ」

 よしよしと頭を撫でられて、アシュリンはふわっと花がほころぶように笑う。その表情に母のホイットニーを思い出し、そっくりだなと小さく口角を上げるアンディ。ほのぼのとした空気が流れていたが、アシュリンのお腹がぐぅぅー! と大きく鳴り、彼女は兄から離れて椅子に座った。
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