【完結】アシュリンと魔法の絵本
「帰ること、お父さんたちに言った?」
「いや、まだ。もう少し、ゆっくり行こうと思って」
「そっかぁ。でも、ちゃんと手紙送らないとダメだよ。ごちそうの準備があるんだから!」
「ああ、確かに母さんとばあちゃんがはりきりそう」

 アシュリンが旅立ったときだって、ごちそうが並んだ。帰る日を手紙で伝えれば、その日に合わせてごちそうを作り、テーブルにさまざまなごちそうを並べるだろう。

 そう考えて、アシュリンは自分の旅の終わりを想像した。

 ――まったく予想ができなくて、小さく眉を下げるとアンディが「アシュリン?」と首をかしげる。

「わたしの旅の終わりって、想像できないなぁって」
「アシュリンはまだ、旅立ったばかりだからね。それにしても十歳かー……そりゃあ記憶よりも大きくなっているよなぁ」

 しみじみとつぶやくアンディ。その瞳はやさしく細められ、今のアシュリンの姿を見つめていた。

「そりゃあ、そうだよ。何度も言っているけれど、三年も会ってないんだもん!」

 手紙でやりとりをしていたとはいえ、三年間、一度も会っていない。それでもこうしてすぐになじめるのは、自分たちが兄妹だからと思い、アシュリンは残りのフレンチトーストをパクパクと食べる。

 話しているあいだにすっかり冷めてしまったが、とてもおいしかった。
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