【完結】アシュリンと魔法の絵本
 アシュリンは時間が許す限り、兄のアンディの本を読んだ。彼の旅はアシュリンにとって不思議な旅で、兄妹といっても、感覚は別なのだと(あらた)めて実感する。

「お兄ちゃんらしいなぁ」
「にゃにが?」

 ぽつりとつぶやく言葉を(ひろ)ったのは、ノワールだった。

 尻尾をふりふりしながら、ベッドにうつ伏せで本を読んでいるアシュリンの背中に乗って、すとんと座る。

「重いよ、ノワール!」
「ノワールはそんなに重くないにゃ!」

 フシャー! と毛並みを逆立てるノワール。もちろん、アシュリンには見えていないのだけど。

「ノワール、こっちにきて一緒に見ようよ」

 アシュリンが誘うと、ノワールはアシュリンの背中を歩いて肩に顔を乗せた。

 そこで見えるのだろうか、と少しだけ考えたけれど、アシュリンは心の中で「まぁ、いいか」とつぶやき、再び本に視線を落とす。

「わたしたちの旅も、不思議なことがあったけど……。お兄ちゃんの旅も不思議なことでいっぱいね」

 アンディの旅はほぼ『人助け』のように見えた。

 困っている人を放っておけず、声をかけて助け、どんどんとお友だちを増やしていく。

 もちろん、アンディが困っているときに助けてくれる人もいた。

「アンディは相変わらずお人好しにゃ」
「そこがお兄ちゃんの良いところなのよ」
< 93 / 141 >

この作品をシェア

pagetop