【完結】アシュリンと魔法の絵本
 ピロマ村で暮らしていたときから、アンディはよく自分たちのお願いや、村人たちのお願いを聞いていた。みんなアンディが器用なことを知っていたし、兄の人となりも知っていたから頼みやすかったのだと思う。

 そんな兄のことを、アシュリンは大好きだった。もちろん、現在も。

「三年かぁ……。わたしの旅も、そのくらいかかるのかなぁ?」
『それはどうでしょう。人それぞれですからね!』

 にゅっとアシュリンの本が(あらわ)れて、アンディの本の周りをくるくると回っている。

「人それぞれ?」
『どこを旅のゴールにするのか、それはその人次第ですから!』

 旅のゴール、と口の中で繰り返し、アシュリンはそっとアンディの本を撫でた。

「お兄ちゃんは、わたしが旅立ったから、旅を終わらせちゃったのかな」
『それは違いますよ。旅のゴールは本人が決めるのだから』

 アンディの本にそう伝えられ、アシュリンは目を丸くする。

「ゴールを決めるのは、自分自身?」
『はい。アンディはもともと一年くらいで旅を終わらせる予定でしたが、気が付けば三年旅していましたからね』
「そうなんだぁ……」

 ほんの少しだけホッとして、ホッとしたら眠気が(おそ)ってきた。自分の本に魔力を流し、アシュリンは目を閉じて――あっという間に眠りに落ちた。
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