【完結】アシュリンと魔法の絵本
 それから、ディータにアンディがどんなことを自慢していたのかを聞かされたアシュリンは、両手を前に出してぶんぶんと横に振った。

「もういいです、もういいです! 聞いていたら恥ずかしくなっちゃう!」

 きっと、自分の顔は今、りんごのように赤くなっているだろうと感じて、アシュリンは目をぎゅっと閉じる。

「……まだたくさんあったのに」
「たっぷり聞きました! ……お兄ちゃん、なんでそんな自慢をしてたのよぉ……」

 なんだか心がくすぐったくて、ジタバタとしてしまう。

 だってあんまりにも恥ずかしくて! とアシュリンは「うー」とうなりながら、目の前に差し出されたオレンジジュースを受け取り、一気に飲み干した。

「落ち着いた?」
「ありがとう……」

 冷たいオレンジジュースを飲んで、なんとか心が落ち着いた。ふぅ、と小さく息を吐いてから、アンディを見上げる。

「ディータさんにそんなことばっかり、話していたの?」
「ん? ディータだけじゃないよ?」
「え?」
「アンディは知り合った人たちに、家族のことを自慢していたよ」
「え、えええーっ!?」

 さらっと言われて、アシュリンの動きがピタッと止まる。

 いったいどれだけの人たちに、家族の自慢をしていたんだろう? とアシュリンが考えていると、ラルフが三人の顔を見ながら、ふっとはにかんだ。
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