御曹司さま、これは溺愛契約ですか?

 身体を心配してくれているのだと感じた美果は問題ないと伝えたつもりだったが、それを聞いた翔はますます不機嫌な表情になった。そして。

「そんなに俺と一緒に寝るのが嫌なのか?」
「へっ……?」

 思いもよらない……というか、ただの冗談だと思っていた台詞を再び告げられ、思わず声が裏返る。

「何言ってるんですか。一緒になんて寝ませんよ?」
「ああ……そういえば寝相悪いんだもんな?」
「えっ! な、なんで知ってるんですか!?」

 きっぱりと否定した直後にニヤリと笑って問いかけられたので、思わず大声で聞き返す。

 確かに美果は寝相があまり良くない。ベッドから落ちたり起床時に身体の上下が逆になっているほどではないが、目覚めたら布団を蹴飛ばしたりお腹が出ていることなど日常茶飯事だ。だが翔の前で眠ったことも自分の寝相について話したこともないはずなのに、どうしてそれを知っているのだろう。

 驚きで目を見開くと、一瞬の間を開けた翔が握りこぶしを唇に押し当てて盛大に吹き出した。

「……ふっ、あはは! なんだ、本当に寝相悪かったのか?」
「え、カマかけたんですか……?」

 どうやら翔は美果の寝相を知っていて確認してきたのではなく、完全な想像だけで美果の反応を確認したらしい。

 思いがけないからかい方に呆気にとられた美果だが、数秒時間を置くと急に恥ずかしくなってきた。なんだか、自分で自分のだらしなさを暴露してしまったみたいだ。

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