御曹司さま、これは溺愛契約ですか?
7. これは恋人契約ですか?
昨晩と同じく二人で一緒に朝食を摂った後は、他の家事をいつもより簡便に済ませて少し遠い場所にある大きめのスーパーへ出かけた。
同じ敷地内にドラックストアやホームセンターや百円ショップもあったので、米や調理オイルといった重い食材から、洗剤やせっけんなどの液体類、ついでにトイレットペーパーやティッシュボックスなどのかさばるものもまとめて買い込んだ。
会計を済ませ購入品を積んだカートを押していた美果は、ふと自分の小さな失敗に気が付いた。隣を歩く翔の横顔をじっと見上げる。
「よく考えたら、翔さんもっといいお米食べれますよね?」
「ん?」
「ほら、有名産地の高級ブランド米とか……」
つい自分の生活レベルと同じ感覚で買い物をしてしまったが、よく考えたら美果の隣にいる男性は天ケ瀬百貨店本社のエリート営業本部長、天ケ瀬御曹司だ。
自社が経営する百貨店には当然のように産地直送のブランド米専門店が入っているし、すぐ傍にはそれにぴったり合うご飯のお供や総菜のお店も入っている。
さすがにスーパーの棚に積み上げられたノーブランドの一番安いお米ではないが、舌が肥えているだろう翔にはもっと美味しい米を購入すべきだったのに。
「別になんでもいいぞ? 秋月の作った飯をまずいと思ったことはない」
「え、あ……ありがとうございます」
急に褒められたので一瞬言葉に詰まる。けれどどうにか笑顔を返す。