御曹司さま、これは溺愛契約ですか?
(付き合う……恋人同士のお付き合いをする……。……私と翔さんが?)
例えば二人で買い物に行く。男性の運転でドライブに行く。女性が作ったご飯を一緒に食べる。お泊りをする。鍵やアクセサリーなどのお揃いのアイテムを持つ。抱きしめられたり、撫でられたりする。
(どうしよう、全部したことある……)
でも多分ちがう。そういうことじゃない。
ならば他に……一緒に映画館やテーマパークに出かける。休暇やクリスマスなどのイベントを一緒に過ごす。旅行に行く。手を繋いだり、同じベッドで一緒に眠ったりする。それから服を脱いで、裸で抱き合って、それから……
だめだ。恋人同士の付き合いについてなにもわからない訳ではないが、それを自分たちに当てはめて考えられない。頑張って翔とのあれこれを想像しようとしたら、顔から火が出そうになる。
「……あの、翔さん。少しだけ考える時間を頂いてもいいですか?」
「考える時間?」
「私、本当に何もわからないんです。恋人同士のお付き合いをしても、どうしていいのかわからないというか……」
話がある、と言われていたので今日一日家事をしながら良いことも悪いことも、もちろんこういう展開も一応は想像を巡らせていた。だが美果にはやはり心構えが足りなかった。実際に翔から熱烈な告白を受けると、自分の想像の乏しさを思い知る。
「自分の気持ちも……よく、わからなくて……」
この状況を短時間では処理できない。それどころか自分の気持ちさえよくわかっていないのだ。