御曹司さま、これは溺愛契約ですか?

 にやりと笑われたので視線を逸らしたが、あまり意味のある抵抗ではないかもしれない。美果がそっぽを向くとくすくすと笑われたので、別に何かをされたわけではないのにどんどん恥ずかしくなってくる。

 期限は設けないがとりあえず少し待ってくれるというので、今はそれでよしとしよう。正直、今日一日で色々ありすぎてもう頭がついていけない。

「それはそうとして、別件で美果に話がある」
「え?」

 翔の顔を見ないように視線を逸らしていた美果だが、ふと翔の声の温度が変わった。別件、という言葉から告白の件や翔と付き合う話、婚約者や鍵の話でもない全く別の用件があるのだと気づいて翔に視線を戻す。

 すると彼がジャケットの胸ポケットに入れていたスマートフォンを取り出して、それを操作しながらとある提案をしてきた。

「美果に、あるパーティーに出席してほしいんだ」
「パ、パーティー……?」

 家事をしながら翔に何を言われるのだろうとアレコレ想像して過ごした美果だが、その『別件』はまったく想定していなかった。

 思わず声が裏返ってしまうが、いつの間にかいつも通りの様子に戻った翔は、美果の反応を待ってくれない。スマートフォンで何かを確認した翔が、電子端末の角を自分の顎先にあてながらニヤリと微笑む。

 何か悪だくみをしているように感じたのは、きっと美果の気のせいではない。

「そう。俺の〝パートナー〟として」

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