御曹司さま、これは溺愛契約ですか?

 美男美女と呼ぶに相応しい外見だけでなく、二人は美果とさほど変わらない若さに思えるのに、本社で重役を担っているという。すごいなぁ、と感動する美果が『……ん? 天ケ瀬?』と疑問に思うと同時に、誠人が二人を指さしてにっこりと微笑んだ。

「翔の弟と妹だよ」
「え、ええっ……?」

 さらりと告げられた事実にびっくりして思わず大きな声が出てしまう。そしてもう一度二人の顔をじっと見つめてしまう。

 確かにただの美男と美女ではない。翔の弟だという煌は、髪は黒よりやや明るいが、言われてみれば顔の造りは翔によく似ている。妹だという希は男女の差があるのでさらにわかりにくいが、目と鼻の形が翔にそっくりだ。

 驚いて瞬きをしていると煌がにこりと笑う。彼は美果に興味津々と言った様子だ。

「美果さんは、自分の雇用条件のことどう思う?」
「え? 雇用条件……?」

 まったく予想していなかった突然の質問に驚き、ついそっくりそのまま聞き返してしまう。

 人事部に勤め人事部長の補佐を担うという煌ならば、当然翔の家政婦として採用された美果の職歴も把握しているだろう。だが彼の瞳に侮蔑するような色は含まれていなかったので、美果は素直に自分の考えを口にした。

「正直あまりに好待遇すぎて、毎月通帳に記帳するたびにびっくりしています」

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