御曹司さま、これは溺愛契約ですか?
身体の状態は先ほどと何も変わっていないばかりか、むしろ発熱はどんどん激しくなっている。体温も急激に上昇している。正直、もう濡らしたタオルで拭いたところでどうにかなるレベルではないことは、美果自身も感づいていた。
「美果、もしかしてさっきの飲み物……」
「しょ……さん、近いです……っ……ん」
「あ、悪い……」
翔が耳元で美果に何かを確認してくるが、その吐息ですら身体が震える刺激になる。全身が震えて、熱を帯びて、火照って、汗をかいて、触れてほしくないはずなのにたくさん触れてほしくなる。もっと撫でてほしい、と思ってしまう。
「翔? ……なにこれ、どういう状況?」
遠くで招待客がぞろぞろと帰っていく声や音が聞こえていたが、ふとその音に紛れて誠人の困惑した声が聞こえてきた。
翔が連絡を取っていたのか、視線を上げると驚きで目をまん丸にした誠人がへたり込んだ美果としゃがみ込んだ翔を呆れた表情で見下ろしている。
「誠人。そいつ、美果に何かしたみたいだ。誰の差し金か吐かせろ」
「え……ええ~?」
翔の端的な命令に、誠人が困惑したような声を上げた。明らかに嫌そうである。
「俺そういうの苦手なんだけど……」
「なら煌にやらせろ。今ならまだ会場内にいるはずだ、外に遊びに出る前に捕獲してこい」
「人使い荒いな」
あいつならそういうの得意だろ、と呟く翔に、誠人が不満げに唇を尖らせる。
だが警察を呼ぶか呼ばないかという判断も含めて、まずは相手から事情を聞くべきという見解は翔と誠人の中では一致しているらしい。誠人が煌に連絡を取り始める様子を眺めながら、美果は傍らにしゃがみ込んだ翔の腕をぎゅっと握りしめた。