御曹司さま、これは溺愛契約ですか?
いつの間にかジャケットを脱いでいた翔の姿を横たわったまま眺めていると、送られてきた画像を確認した翔が怪訝な声を出した。
「なんだこれ?」
『媚薬だよ、媚薬』
翔が不機嫌な声で問うと、誠人があっさりとした口調でそう言い放った。
『家政婦さんに渡したカクテルに混ぜた、って白状したけど、そんなに強い効果はないと思うな』
「そうなのか?」
『だってこれ、ただのアダルトグッズだもん。たぶん栄養補助飲料とか精力増強剤みたいなもんだと思う。エナジードリンクとかと同じレベルじゃないかな』
誠人は翔と会話をしつつ情報を検索してくれたらしい。萌子の荷物から出てきた飲料の詳細を呆れたように説明してくれる。その報告に、翔が顔を顰めた。
「は? でも美果は……」
翔がスマートフォンを手にしたまま美果を一瞥する。翔の顔には『誠人の説明と美果の状態が一致していない』と書かれていたが、美果は首を横に振ることしかできない。
キャバクラに勤めているときに得た知識から、アダルトグッズの存在や精力増強ドリンクの効果なら美果も一応は知っている。もちろん使ったことはないので、今の身体の状態がそれと近い状態にあるのかどうかは説明できないけれど。
「……わかった、今そっちに行く。稲島親子はまだ帰すな」
『りょーかーい』
誠人との通話を終了させると、ソファの背もたれにかけてあったジャケットを手にした翔が、再びベッドへ近付いてくる。