御曹司さま、これは溺愛契約ですか?
それに頭を撫でられて唇が触れ合ったせいか、身体が違う反応を始めている。体温は下がるどころかまた上昇し始め、理性と判断力を焼き切ってしまいそうなほどに火照り出している。
「翔、さん……暑いです……」
「落ち着け、美果。大丈夫だから、ゆっくり深呼吸しろ」
「でも……」
一度意識したことが悪かったのか、体温がどんどん上昇していく。身体の奥に灯った炎が全身を巡りながら増幅していく。
きっと濡れたタオルで汗を拭いても、空調を変えても、水を飲んでも、熱は引かない。だからこの状況を維持していても埒が明かないことを、頭のどこかで理解している。
せめて服を脱ぎたい。夏用のドレスなので生地は薄いが、これが肌に纏わりつくうちは何をしても暑いままな気がする。もちろん肌を見られるのは恥ずかしいが、翔に手伝ってもらって備え付けのバスローブやナイトウェアに着替えれば、いくらか熱が引くかもしれない。
そう考えて背中のファスナーに手を回そうとすると、翔に突然腕を掴まれた。
「だめだ、美果。服は脱ぐな。……俺の方が危ない」
「でも……暑くて……」
「服を脱いでも暑いのは変わらない。いい子だから、もう少しだけ耐えてくれ」
翔の困ったような表情を見て、とりあえず顎を引く。だがそれでは身体の熱さも下腹部の疼きも治まらない。それではなにも変わらないとわかっている。