御曹司さま、これは溺愛契約ですか?
けれど翔の傍で過ごすようになって、彼の本当の姿を知った。それと同時に自分の夢や目標、辛さや悩みを打ち明けて、受け入れられ、美果はいつの間にか翔に惹かれていた。はじめての恋に落ちていた。
この気持ちは嘘ではない。だから本当に何をされてもいい。むしろこんな恥ずかしい状況を一緒に乗り越える相手なんて、彼以外に考えられないのに。
「好きならなおさら、最初はちゃんとしよう」
「翔さん……」
それでもやっぱり、翔は美果が大切だと言う。
美果を何よりも大事にしたいからこそ、今この瞬間は我慢して、もっと深く愛し合って繋がりたい。互いの想いを重ねる準備を整えてゆっくりと抱き合いたい。初めては痛みも伴うし不安も負担も大きいからこそ、こんな苦しい状況まで重ねたくない。
もちろん美果を嫌いになったわけじゃない。美果が不要になったわけでもない。むしろその逆で、これから先も傍にいてほしい大事な存在だからこそ、大切にしたいと言うのだ。
「……わかりました」
そんな翔の考えを受け入れることに決める。身体は熱くて辛いし、もどかしさを感じている。けれど今は翔を信じて、乗り越えたいと思える。
翔が指を絡めてぎゅっと手を繋いでくれるなら、もう少しだけなら頑張れる気がするから。
「その代わり、次はもう手加減しない。据え膳食い逃す分、今度は本気で抱くからな」
「……うん」