御曹司さま、これは溺愛契約ですか?
昨日の美果は、どうかしていた。じんじんと疼く切なさに抗えず、翔に恥ずかしい姿を見せてしまった。身体が熱く火照るあまり、性体験もなかったのにひどく乱れてしまった。その上、熱の発散の手伝いをさせるという不埒にもほどがある状況に翔を巻き込んだ。
対する翔は不安を感じる美果に知識とぬくもりを与え、紳士的な態度で美果を諭してくれた。美果が大切だからこそ、ちゃんと抱きたいと一途な想いを示してくれた。
普通ならドン引きされても仕方がないところなのに、翔は大人の余裕たっぷりに美果のすべてを受け止め、一線を越えないという選択をしてくれた。
だから翔には感謝しているが……冷静になるとやっぱり猛烈な羞恥に襲われる。もう、穴があったら入りたい。
「……美果?」
「!!」
翔の腕の中で昨晩のことを思い出していると、ふと彼の腕がピクリと動いた。
「おっ、おはようございます……翔さん」
「……みか、がいる」
緊張で心臓がドキドキうるさい。それでもちゃんと挨拶をしなければ、と考えて肩から振り返ると、眠そうな表情の翔がこちらをぼーっと見つめていた。
「おきたら美果がいる……最高だ……もうベッドからでない」
「な、何言ってるんですか……」
忘れていた。この人、朝は本当にぽんこつだった。大人の余裕たっぷりに美果を想ってくれる紳士はどこへやら。
ベッドサイドにあるデジタル時計を確認すると現在の時刻は午前八時。日曜なので互いに仕事は休みだが、ホテルなのだからチェックアウトの時間は決まっているだろう。