御曹司さま、これは溺愛契約ですか?
「しょーさん! 起きてください!」
深く息を吐いた翔の呼吸がスースーと安定していくので、完全に二度寝に落ちてしまう前に大声で起こそうと試みる。すると美果を抱きしめたままの翔が「ん~」だの「もう少し」だの呟きながらもぞもぞする。やはり簡単には起きれないらしい。
仕方がない、と力任せに翔の腕から逃れた美果は、ベッドの上に身体を起こすと布団を勢いよく剥ぎ取った。
ベッドサイドにブラインドを電動で開けるボタンがあったので、ついでにそれも押して部屋全体に朝日を取り入れる。美果の行動に、翔が不快そうに表情を歪めた。
美果と同じバスローブ姿ではあるものの、顔が整った麗しい男性が太陽光を嫌がる姿は、何となくヴァンパイアっぽい。
なんて失礼なことを考えていたが、そうこうしているうちに翔も覚醒してきたらしい。欠伸を噛み殺しながらうっすらと目を覚ました翔に向かい、シーツの上に正座をして丁寧に頭を下げる。
「昨晩はご迷惑をおかけして、本当に申し訳ありませんでした」
「別に迷惑なんて思ってないぞ?」
美果の謝罪を聞いた翔は、シーツの上に肘を立てて頬杖をつくと、そのままにやりと楽しげな笑顔を浮かべた。
「えっと……あの後のこと、聞いてもいいですか?」
その笑顔を受け流すように、昨夜うっかり眠ってしまったせいで聞き逃した経緯を訊ねる。
美果の質問に短く頷いた翔が、姿勢はそのままに鼻から細い息を吐いた。