御曹司さま、これは溺愛契約ですか?

「わかった。じゃあ土曜日、美果の家事が終わったら――そのまま抱く」
「……っ」

 答えを聞いた翔が、美果の耳元に唇を近付けて甘く掠れた声で囁く。はっきりと『抱く』と言い切る真剣な声に、美果の顔が熱く火照る。

(私、翔さんと……えっ……ち、するの?)

 昨晩、翔が美果を諭した台詞を思い出す。翔が言う『正常な判断が出来る状況で』との台詞は、確かに『後から後悔しないため』という意味もあるのだろう。

 けれどきっと、それだけではない。おそらく翔は、美果に『自分に抱かれることをしっかり意識しろ』と言いたがっている。だから彼は、あえて美果に自ら日付を指定させた。美果に深く強く意識させることで、絶対に逃げられないようにしたいのだろう。けれど。

(まって、えっちするときってみんな『この日にしようね』って約束するの? そんな美容室みたいに予約とかするものなの!?)

「美果」
「ひゃい……っ!?」

 ぐるぐると考えて込んでいるところに急に名前を呼ばれたので、またびくんっと飛び跳ねる。美果の過剰反応を見て、ふっと表情を緩めた翔が、美果の頭をくしゃくしゃと撫でて優しく微笑んだ。

 ただし愛犬を可愛がるような態度と異なり、口調と視線だけはやけに本気である。

「ちゃんと、覚悟しておけよ」

 妖艶に微笑む翔の姿に、そのまま気を失って倒れそうになる。

 心臓がもちません……と呟いた美果の声はきっと翔にも聞こえていたはずだ。

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