御曹司さま、これは溺愛契約ですか?
「わたし……翔さんが、好きです……」
震える声で、胸の底に隠していた気持ちをそっと紡ぎ出す。こうして大事にしてくれることが嬉しい、翔になら何をされてもいい。
「私も、翔さんとお付き合い、したい……です」
「……美果」
ずっと傍にいたい。もっと深く知りたいし、知って欲しい。心も身体も繋ぎ合わせたい――その気持ちを素直な言葉に変えて伝えると、翔がほっと安堵したように息を吐いた。
「よかった。これ以上待ったら、俺の方がおかしくなるところだった」
翔の笑顔と至近距離で見つめ合う。絡めていた指を深く握られるだけでさらに緊張する。
その呟きと表情から彼の本気度を知ってまた急に恥ずかしくなったが、美果は照れている場合ではない。それに過度に期待されても困る。
「翔さん、あの……一応、覚悟……はしてきたんですけど……」
「ん?」
「その、はじめてだから……翔さんを気持ち良く、できないかもしれません」
自分で口にした説明に、かぁっと顔に熱を持つ。もちろんみなまで言わなくとも、翔は美果が経験不足であることを把握しているだろう。だが変に期待されて後からがっかりさせたり、些細な勘違いからすれ違うようなことは極力避けたい。
そう思って口にした言葉に、翔が少し呆れたような声を出した。
「美果は何の心配をしてるんだ?」
翔の困ったような台詞を聞いてそっと視線を上げる。ふと目が合った翔は、優しい笑みを浮かべていた。