御曹司さま、これは溺愛契約ですか?

 年齢も恋愛経験も違う翔と比べても仕方がないのはわかっている。勉強したところですぐに実践できるわけではないこともわかっている。

 けれど今の美果が翔に出来ることはあまりにも少ない。翔の身の回りの世話は出来るが、それではただの家政婦と何も変わらない。だからせめて、翔が気持ち良くなれる方法ぐらいは身につけたい。

「翔さんのことも気持ち良く出来るように、精進しますから」
「……ふは、あはは」

 そう思って真面目に宣言したら、何故か翔に笑われてしまった。

「……?」
「いや、美果は努力家で勉強熱心だからな……けど」

 一瞬は美果のことを褒めてくれた翔だったが、すぐに自分の言葉を否定する。だから何か不満があるのかと思ったが、そういう意味ではないらしく。

 翔が布団ごと美果の身体を抱き寄せる。未だ全裸の美果と違い、いつの間にかルームパンツとシャツを着ている翔だが触れ合った体温は温かい。熱すぎるぐらいに。

「可愛い恋人ができて浮かれてる俺の『色々教え込む楽しみ』を奪うのは、ほどほどにしてほしいな」
「!?」

 そう言って美果のこめかみにちゅ、と口付けてくる。さらににこりと笑顔を向けられると、美果はもう照れるしかない。

(翔さん……ちょっと色気が漏れすぎてるというか、甘すぎるというか)

 天ケ瀬翔、恋人に対しては一周回って元のキラキラで完璧な王子様になるなんて、あまりにも予想外すぎる。

 ちゃんと身構えておかなければ、やっぱり美果の心臓は持たないかもしれない。

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