御曹司さま、これは溺愛契約ですか?

 だが父や弟や妹と違ってド天然な母に『パートナーであり家政婦でもある』と説明しても、おそらくまったく通じない。

 箱入り娘で蝶よ花よと慈しまれて生きてきた彼女に『将来を考えている相手に給料を支払って家事をさせている』という状態が理解できるとは思えない。結果、美果を不安にさせるようなことを口走ることは、目に見えている。

 さらにマダムたちの集いで『翔くんのパートナーはお金で雇った家政婦さんなのよ』なんて暴露された日にはすべてが台無しだ。それでは周りにも美果自身にも『天ケ瀬翔が大切にしているのは秋月美果だけ』と印象づけた意味がなくなる。

 だから今はまだ会わせない。鍵を付け替えたときに実家に合鍵を送らなかったのも、日中突然家にやってきた美雪が、美果と鉢合わせないためだ。

「いずれ会わせるからもう少し待ってくれ」
『え~……』
「……っ~~ふ……ぅっ」

 母と会話をしながら、左手でずっと美果の胸に触れ続けている。布越しに胸を揉まれる感覚は嫌ではないようだが、すぐ傍で別の相手と会話をしている状況に緊張感が増すらしく、美果の身体はずっと強張ったままだ。可愛い。

『もう、わかったわよ。じゃあ紹介してくれるの待ってるから』
「あ……っふぁっ」

 美雪の声を聞きながら、パジャマの下でほんのりと膨らんできた胸の先を摘まんで刺激する。すると美果の喉から一瞬甘い声が漏れたが、

『またね、翔くん』

 という美雪の元気な声と被ったため、電話の向こうにその声は届かなかったようだ。

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