御曹司さま、これは溺愛契約ですか?
ぽんぽんと頭を撫でる優しい指先が、美果の孤独を優しく癒して解きほぐしていく。
美果はもう、ひとりぼっちじゃない。辛いことを共有していい。悲しいことを吐き出していい。全部自分だけで抱え込まなくていい。
そう教えられていることに気づくと、心の氷がゆっくりと融けていく。長い孤独と苦しみが、少しずつ消えていく。
「美果はもう少し、周りに甘えることを覚えろ。もっと俺を頼れ」
「……翔さん……。ありがとう、ございます」
翔に慰められて、涙がぼろぼろと零れてくる。誰にも見せてはいけない、笑顔でいなきゃいけない、心の弱さに負けたら立ち直れないと必死に耐えてきた感情が決壊したように溢れ出す。
「そうだ、そうやって泣いていい。辛かったら辛いと言っていい。憎んでも嫌ってもいい。俺が話を聞いてやるし、慰めてやるし、許してやる」
「しょう、さん……」
「自分を大切にすることは悪いことじゃない。美果のわがままなら、俺が全部聞いてやるから」
優しい微笑みを浮かべた翔が指先で涙を拭ってくれる。泣いたらぶさいくになると分かっているのに、翔はそれさえも愛でたいと言わんばかりにずっと頬を撫でてくれる。
「たくさん泣いて気が済んだら、もう忘れてもいいぞ。あんな奴のこと考える暇があるなら、俺のこと考えてくれ」
「はい……」
翔は冗談のつもりで言ったのかもしれないが、美果は素直に頷いた。