御曹司さま、これは溺愛契約ですか?
だからそれが翔なりの冗談だとわかっているのに、首筋に強く吸いつかれ、顔を上げるとすぐに唇を重ねられ、耳元で「今からその気にさせてやってもいいぞ?」と囁かれると、あながち本当にそのつもりだったのではないかと疑ってしまう。
けれど本当は、美果自身が誰よりも『それ』を望んでいる。
もし翔が許してくれるのならば。
美果の夢を叶えるために、同じ景色を見てくれるならば。
「……私も翔さんと一緒に、ハワイに行きたい、です」
恥ずかしい気持ちを隠したいような、けれどちゃんと口にしたほうがいいような、面映ゆい気持ちでもじもじと告げる。
「ひぁっ……」
「美果、水曜は休みだよな?」
すると美果の頬にちゅ、と口付けた翔が、髪を撫でながら意外な質問をしてきた。
視線を上げて、え? と首を傾げる。
確かに、美果は日曜日以外に週のどこかでもう一日休暇を得られることになっていて、大体の場合は水曜日が休みとなっている。もちろん次の水曜日も同じだ。だがそれが今の話の流れとどう関係するのだろう……と思っていると。
「水着を買いに行くなら、俺も仕事休む」
「なに言ってるんですか……仕事には行ってください……」
森屋さん泣いちゃいますよ、という言葉は翔のキスに奪われる。その優しい口づけから、どうやら翔はもうすでに美果とハワイに行く気満々らしいことを窺い知る。
「ホテルの部屋についてるプールを使うなら、裸で泳いでもいいけどな」
「……」
翔はたまに、本気なのか冗談なのかわからないことを言う。