御曹司さま、これは溺愛契約ですか?
「わぁ~っ! 海……! すっごい綺麗~!」
真っ白に輝く浜の向こうに、セレストブルーとエメラルドグリーンのグラデーションが煌めいている。美果が知る海の色とはまったく異なる。爽やかでなめらかな色合いと波光は、まさに〝楽園〟の名にふさわしい美しさだ。
「すごい、ヤシの木もいっぱい!」
海ももちろん美しいが、ビーチの景色もまた壮観である。
間違いなく東京には自生していないヤシの木は、まさしく南国の象徴だ。日本でも沖縄に行けば生えていると聞いたことがあるが、美果が自分の目で見るのは初めてのこと。
そのヤシの木の下に広がる白浜は、世界有数のリゾート地なだけあって見渡す限り観光客やサーファーで埋め尽くされている。
「翔さん、みてください! ヨット! すごく大きいです!」
「……はしゃいでる美果が可愛い」
ビーチの向こうにセーリングヨットがあるのが見えて隣にいる翔のシャツの裾をくいくい引っ張ると、それを見た翔が口元を押さえて震え出した。
翔の表情を確認すると、急に恥ずかしくなって黙り込んでしまう。
先ほど豪華なホテルの部屋にチェックインしたときも、部屋が可愛い、眺めが最高、ウェルカムスイーツがカップケーキだ、お風呂が広くてジャグジー付きだと散々騒ぎまくって笑われたのに、また同じようにはしゃいでしまった。