御曹司さま、これは溺愛契約ですか?
だからどんな姿が撮れたのだろうか、と撮影した写真を確認して、また見とれてしまう。
(モデル……? 天ケ瀬百貨店のポスターに使う?)
前回は写真を撮られることを意識していたためか少しぎこちない表情だったが、今日の翔は完全に自然体の姿だ。
カメラ目線でもなければ、ポーズを決めているわけでもない。写真を撮られることも意識していない。けれど美果とゆっくりと過ごすこの瞬間を純粋に楽しんでいるような、どこか嬉しそうな表情をしている。
そう、写真の中に収めても、翔はやはり格好良かった。
「みーか? 俺を撮ってどうするんだ?」
撮影した写真を確認していると、その間にすぐ近くまでやってきていた翔がひょいっと顔を覗き込んできた。いつの間に距離を詰められたのだろうとびっくりする美果は、からかいの視線を向けてくる翔につい真顔で訊ねてしまう。
「事務所通した方がよかったですか?」
「事務所?」
なんの? と楽しそうに首を傾げられる。美果はつい、所属している芸能事務所に……と言いかけたが、その前に翔の手が美果のカメラを掴んだ。
「俺にも撮らせて」
優しい声で訊ねられたので、なんだか既視感のあるシチュエーションだなぁ、と思った。
それもそのはず。美果が夢のかけらである父のカメラを翔の家に預けたとき、これと全く同じやりとりをした。美果が写真を撮る姿に興味を持った翔が、そのカメラを使わせてほしい、と美果に願い出てきたのだ。