御曹司さま、これは溺愛契約ですか?

2. 常夏の夜の約束


「美果」

 ウトウトとまどろんでるところに声をかけられ、ハッと意識が覚醒する。

 オアフ島の写真撮影ドライブを終えてホテルに戻って来た美果は、豪華な夕食を堪能して広いお風呂にゆっくりと浸かると、その心地よさから急激な睡魔に襲われた。

 翔が入浴する水音を遠くに聞いているうちに浅い眠りの世界を行ったり来たりしていたが、翔に声をかけられたことで急に意識が戻ってきた。

「あ、ごめんなさい……寝ちゃってました」
「さすがに疲れたか?」

 大きなベッドの上に身体を起こすと、入浴を済ませた翔がマットレスの端に腰かけてそう訊ねてきた。

 首からタオルをかけた翔はまだ髪が少し濡れている。色っぽく微笑まれるとそれだけでドキッと緊張したが、美果は、

「大丈夫です! 初日ですからね!」

 と笑顔でガッツポーズをしてみせた。

 せっかくのハワイ旅行なのだ。美果の夢を叶えるために翔がこれほど念入りに準備してくれたのに、初日から疲れてはいられない。

 明日も別の島に写真撮影に行く計画を立てているし、せっかくのリゾート地なのだから海でも泳ぎたいし、食べ歩きや買い物だってしたい。

 だからまだまだ平気です! と意気込む美果に、ふと翔が身体の距離を近付けて耳元で優しい言葉を囁いた。

「美果、誕生日おめでとう」
「!」

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