御曹司さま、これは溺愛契約ですか?
翔が言わんとしていることは薄々察している。言葉にされなくても態度からなんとなく気づいている。それでも美果は、素直な気持ちを伝えてくれる翔の言葉を静かに待った。
一瞬、しんと空気が静まり返る。その静寂を打ち破るように、美果の目をじっと見つめた翔がそっと口を開く。
「美果、俺と結婚してほしい」
それはストレートな愛の告白だった。これ以上ないほどわかりやすく情熱的な、紛れもない求婚の言葉だ。
美果の左手を取った翔が、どこからか取り出した宝飾品を薬指に滑り込ませる。
指の根元にするりと落ち着く細いプラチナのリング。絶対に離れたくないと主張しているかのような一粒のダイヤモンド。美果への求愛と誓いを告げる美しい婚約指輪。
言葉を失ってその輝きに見惚れていると、翔が緊張の面持ちで次の言葉を紡ぐ。
「美果に傍にいてほしい。ずっと俺の隣で笑っていてほしい。美果を幸せにする権利を、俺だけが独占したい」
翔の想いはただ一つ。この先一生、美果だけを『最愛』とすること。美果の手だけを取り、美果だけを見つめ、美果だけを守り愛すること。
互いの隣で生涯を歩むこと。秋月美果を幸せにするための言葉や行動のすべてを、天ケ瀬翔が独占すること。
誓いを立てるように、その許しを乞うように、じっと瞳を見つめられる。