御曹司さま、これは溺愛契約ですか?
けれど翔の想いにときめいていたのは、ほんの数秒だけだった。
「俺は、結婚の確約を得ただけじゃ満足しないぞ」
「え……?」
意味深な言葉と共に身体を離した翔の顔を見つめ――ようと思った。
だがその直前に美果の視界が後ろにくるっと倒れる。先ほどまで横になってうとうとしていた柔らかいベッドの上に、再度身体を押し付けられる。
「俺じゃなきゃダメだって、わからせてやる。……心にも身体にも」
「翔さ、……!」
いやいやいや、何を言ってるんですか。私もう、間違いなく翔さんのものです。
という台詞は、最初の「い」すら音にならなかった。翔の細長い指が、寝衣であるワンピースの肩ひもをしゅるりと解く。
翔の視線は飢えた獣のようだ。我慢をしすぎたせいで、欲望が限界まで膨れ上がったように、目がぎらぎらと輝いている。
「明日は……ハワイ島に行きたいんですけど……」
「大丈夫だ。少しは寝かせてやるから」
諦めの気持ちを抱きながら「お手柔らかにお願いします」と言おうとしたが、懇願の言葉は翔の激しいキスに奪われた。
互いの身体がシーツに沈むといつもと違う石鹸の香りがふわりと広がる。甘い花の匂いに包まれながら翔の背中に手を回すと、それだけでお腹の奥がきゅん、と痺れる気がした。