御曹司さま、これは溺愛契約ですか?
美果の顔を見つめて少年のように微笑む翔に、ハッと我に返る。
そうだ。確かに今回のハワイ旅行は美果の希望を叶えるべく翔が計画してくれたものだが、だからと言って美果の目的の達成がすべてではない。翔も美果と思い出を作るために色々と手を尽くしてくれているのに、自分の都合だけで振り回してばかりでは申し訳ない。
晴れて婚約者となった大切な人の気持ちをまったく考えていなかった、と反省していると、翔がぽんぽんと美果の頭を撫でてくれた。
「翔さん、あの……」
「少し息抜きしよう。仕事や考え事に夢中になるのも悪くないが、人間は適度に休息して現状を楽しんだ方が、良いインスピレーションが湧いてくるらしいぞ」
「あ……」
謝罪の言葉を口にしかけた美果だったが、彼が語った台詞はやはり美果のための言葉だった。
(翔さん、私が行き詰まってること察してくれたんだ……)
これまでの翔は、美果の様子を傍で見ていることはあっても、写真撮影の邪魔をしたり声をかけて美果の集中を乱すようなことはしなかった。だが今日は、急に声をかけられた。
それを不思議に思う美果だったが、彼は撮影の邪魔をしたかったわけではない。ただ美果が思い通りに写真を撮れず落ち込む姿を見て、ひとまず気分転換をして気持ちを切り替えてはどうかと提案してくれているのだ。
さすがはきらきら御曹司の完璧な王子様。察知能力が高すぎるし、気遣いの塊だ。