御曹司さま、これは溺愛契約ですか?

 だが裸と水着姿は違う。
 全然別のものだ。

 例えばお腹、特に下っ腹、それに背中や二の腕、太腿の上部といった普段は隠れた部分が、水着姿では丸見えになってしまう。もちろん大事な部分はしっかり覆われているが、身体のラインが剥き出しになるのでどうしても細かい箇所が目についてしまう。

 裸になるとそれ以上に恥ずかしい部分を見られることになるので、細かい部分はあまり気にしていられない……って、もちろん裸も恥ずかしいのだけれど!

「美果、ちゃんと見せて」
「で、でも……」
「美果は今、俺の腹も腕も見てるよな? 俺は美果に全部見せてるのに、美果だけ隠すのはずるいと思わないか?」

 思いません。だって翔さん、お腹も二の腕もちゃんと引き締まってるし、綺麗な身体ですもん……

 と言っても納得しないのだろう。もちろんサーフパンツと半袖パーカー姿の翔よりも水着姿の美果の方が露出が多い、と文句を言っても、同じく納得しないと思う。いじわるな翔は、基本的に美果をからかうのが好きらしいから。

 翔の視線と無言の圧力に負け、木製テーブルとサマーベッドの傍でTシャツとショートパンツを脱ぐ。

 もともとカメラのケースやレンズを置くために大きなビーチパラソル付きの場所を確保してあったのだが、今はそれが有難い。このパラソルがプライベートビーチにぽつぽつ見える他者の目から美果の姿を隠してくれるなら、翔以外の人には見られずに済むだろうから。

 翔との旅行が決まってからたくさん悩んでどうにか選んだのは、ホルターネックのトップにローライズのボトムを合わせたセパレートタイプの水着だった。色は黒地に白いリボンレースを重ねてあるので、多少なら体型はカバーできるが……

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