御曹司さま、これは溺愛契約ですか?
「っ……あんまり、じっと見ないで……ください」
腕を組んだ翔が、顎先を触りながらまじまじと美果の姿を観察する。その視線が恥ずかしすぎて、つい顔を背けてしまう。首の後ろで結ばれたリボンはTシャツの襟から見えていたが、水着姿を翔に見せるのは初めてなわけで……
「も、もうシャツ着ます」
「美果」
何も言ってくれない翔の視線から逃れようと、たった今脱いだシャツをわし掴む。
その手首を翔が突然掴んだのでハッと顔をあげると、それまで真顔だった翔がにやりと口の端をつり上げた。
「このビーチ、人少ないよな?」
「!? !? !?」
パラソルに隠れてれば大丈夫……じゃない。
――この人、ぜんぜん遠慮とかしてくれない。
* * *
「すごい……宇宙にいるみたいです……」
「東京じゃこんな星空は見れないもんな」
夜空を見上げた美果の感動の声に、翔も同意して頷いてくれる。濃紺の絨毯に光の粒子をばらまいたような満天の星空は、海や空が織りなす青色の絶景とはまた違った美しさだ。
「夢みたいです……こんな景色が見れるなんて」
今にもこぼれ落ちてきそうな星々を写真に収めようとファインダーを覗いてみるが、小窓の中に閉じ込めるにはあまりにも壮麗で広大な景色である。
カメラから顔を離して上空を見上げるたびに感嘆の吐息を漏らす美果の姿を見て、翔も楽しそうに笑う。