御曹司さま、これは溺愛契約ですか?

 ハワイで最も宇宙に近いと言われているマウナケア山の『星空観測ツアー』に参加した美果と翔は、結局ハワイ島のホテルにも一泊することを決めた。急に夜のツアーに参加することは不可能だと思っていたのに、これまた翔がツアーの予約をしてくれていたと知ったからだ。

 もしや美果が興味を持ちそうなものは、なんでもかんでも片っ端から予約しているのではないかと不安になる。

 だが翔いわく予約をしていたのはハワイ島のホテルとこのツアーだけで、他には何の予定も組んでいないし、直前でキャンセルする迷惑もかけていないという。

 ということは美果の望みはすべて翔に見通されているか、知らない間に美果が彼の思惑通りに誘導されていることになる。

 ならば昼間にビーチで恥ずかしいいたずらをされたのも、その疲れからホテルでお昼寝をしてしまったのも、今夜この星空観測ツアーに美果を参加させるための布石だったのではないかと思う。

 そう考えると何もかもが敵わなさすぎて、美果は大人しく白旗を上げるしかない。だから今回の旅は翔にすべてを委ねることにする。けれどそのぶん、いつか美果も翔の願いを叶えてあげたいと思う。

「今度は私が、翔さんを連れてきますね」

 美果がぽつりと呟くと、星空を見上げていた翔が視線だけで美果の表情を確認してきた。目があった翔がくすくすと笑う。

「新婚旅行で?」
「えっ、新婚旅行も行くんですか?」
「当たり前だろ。絶対休み取ってやる」

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