御曹司さま、これは溺愛契約ですか?
4. ご機嫌ホリデーのあとは
楽しかった数日間のあれこれを思い出しながら、航空機の小窓の外に遠ざかっていく景色を眺める。
美しい海と空の楽園・ハワイには思い描いていた以上の世界が広がっていて、美果と翔は大自然が織りなす絶景を心ゆくまで楽しんだ。
青にも蒼にも碧にも煌めく渚を気が済むまで写真に撮り、水面がきらきらと輝く波の間を翔と一緒に泳ぎ、黄金色の水平線に太陽が沈んでいく様子を二人で並んで眺め続けた。
夜になったら星を散りばめた壮麗な宙を見上げ、静かな波の音を聴きながら手を繋いで暗い海辺を散歩した。ぐっすりと眠っている翔の腕の中から、窓の外に凪ぐ穏やかな朝焼けもこっそりと楽しんだ。
それに二人が楽しんだのは、景色だけではない。地元の人がおすすめする巨大なハンバーガーも食べたし、テレビや雑誌で取り上げられている有名なパンケーキも食べた。穴場のカフェで本場のコナコーヒーも飲んだ。
不満といえばマラサダを頬張る美果の口の周りについた粉砂糖を、人目も気にせずキスして舐め取られたことぐらい。けれどむくれる美果にお詫びだといって用意してくれたカクテルが甘酸っぱくて美味しかったので、翔のいたずらは許してあげることにする。
美果は父と交わした約束を叶えられた。両親が愛した景色を自分の目で見て、自分の肌で感じて、自分の手で写真に残したい――そのささやかな願望を達成し、SDカードの容量と美果の心の中には今、美しい色彩が詰め込まれている。