御曹司さま、これは溺愛契約ですか?
撮り溜めた写真は三百六十五枚をゆうに超えている。近いうちにアルバムを作って実家の仏壇に供えたいと思っているが、数が膨大すぎて選ぶのが大変そうだ。
「そういえば、森屋さんへのお土産ってマカダミアチョコレートだけでよかったんですか?」
二人の間にある肘掛けに頬杖をつき、美果と同じく外の景色を眺めていた翔にそっと訊ねる。
今回のハワイ旅行を計画したとき、誠人が翔のスケジュールを調整してどうにか休暇をとれるよう尽力してくれたと聞いた。なのにお土産が一番有名なマカダミアナッツチョコレートだけとは、あまりにも簡素すぎる気がする。
「十分だろ。あいつチョコレート好きだしな」
「な、なるほど……?」
翔が小さな笑みを零しながら呟くので、内心『そういう問題?』と思いながら頷く。
「俺が休みの間は、あいつもほぼ休暇なんだ」
翔いわく、今回の翔の休暇は誠人にとっても少しだけ特別な意味を持つらしい。ふと表情を緩めた翔が、くつくつと喉で笑う。
「誠人も、俺がいない間にどう口説こうかと必死だろうからな」
「?」
翔の言葉には主語がなかったが、話の流れから考えるにどうやら誠人にも意中の相手がいるらしい。翔が不在になることや休暇を得ることと、誠人がその相手にアタックすることに何の因果関係があるのだろうと思うのだが。