御曹司さま、これは溺愛契約ですか?
最高の贈り物をくれた翔に、改めてお礼の言葉を伝える。こうやって美果の夢や望みを叶えてくれることに、美果に溢れんばかりの幸福を与えてくれることに、美果の喜ぶ姿を見たいと言ってくれることに、感謝してもしきれない。
それに美果に永遠の愛を誓って、これからの人生を共に歩みたいと言ってくれたことも。
ふと視線を下げると、肘掛けに乗せた左手の薬指にダイヤモンドのリングが輝いている。美果に気づかれないようにサイズを確認して、今回の旅行までにちゃんと準備し、最高のタイミングでプロポーズをしてくれたことに深い愛情を感じる。
愛され過ぎて、怖いと思うほどに。
でも嬉しい、と思いながら煌めく宝石を右手の人差し指で撫でていると、翔がふと真剣な声で美果の名前を呼んだ。声に反応して顔を上げると、すぐ傍にいる翔とじっと見つめ合う。
「美果、大学に行き直さないか?」
あっさりとした口調で示された提案に、一瞬言葉を失う。数秒遅れてどうにか「え?」と声を発することは出来たが、それ以上の音が出てこない。
驚く美果の代わりに、翔が沈黙の隙間を埋めてくれる。確信と、美果への愛情を込めて。
「今回、美果の姿を見てて思ったんだ。美果は本当は、『カメラを通して見る世界』じゃなくて『本物の世界』を知りたがってるんじゃないか、って」
「え? え……っと?」
美果が困惑の声を発すると、翔が一旦話を止める。それから言葉を選ぶように、けれど美果の戸惑いを拭うように優しい声で諭してくれる。