家賃滞納の保証にクラスのイケメンを預かりました

10話

○祭りの雑踏の中を、玲央に手を引かれ走りぬける千夏。

・千夏(狐のお面・・でもこの手の感触は────玲央君・・)

状況が掴めないながらも、ドキドキと胸を高ならせる千夏。やっと足を止めるも、ぜーぜーと息が上がる二人。

・千夏「・・玲央君・・だよね・・?」

玲央は答えない。その時、頭上では花火が上がる。

・千夏「わぁ・・」

花火に見いる千夏。すると・・

・玲央「好きです」

千夏が隣を見ると、そこにはお面をつけたままの玲央がこちらを向いている。

・玲央「家族としてじゃなくて・・本当は女の子としてちーちゃんが好きです」

千夏はふふっと笑う。

・千夏「・・顔見せてよ」

そう言われて、お面を取る玲央。恥ずかしそうに顔を赤らめた表情が露わになる。思わず玲央の胸に飛び込む千夏。

・千夏「私も好きです・・! 玲央君のことが、大好き・・!」

抱きしめ合う二人。

・千夏モノローグ(玲央君の初めての花火・・一緒に見れて良かった)




○一学期の就業式。帰り支度をする千夏に、声をかけてくる友達。

・友達A「明日から夏休みだし、皆でパーっとカラオケでも行っとく?」

・友達B「でもさ、なんか・・みんな、行かなさそうじゃね・・?」

夏休み中にも連絡を取り合うためか、教室にはカップルの姿が多く見られる。

・友達A「なんか・・増えたね、カップル・・」
・友達B「みんな夏休み前にって告白してたしね。それにさ・・ミカなんかもう、エッチしちゃったらしいよ」
・千夏「エッ・・!?」

友達の言葉に仰天して叫びそうになった千夏は、口を抑える。

・千夏「はっ、早くない!?」
・友達A「ねー」
・友達B「まあでも、そういう話もチラホラ聞くよね。もう高二だし・・梓は彼氏とか・・」
・梓「ない」
・友達B「あ、そうだよね・・」
・友達A「千夏は? そろそろ爽介と付き合っちゃったりとか?」
・千夏「な、ないない! 爽介は幼馴染だし!」
・友達A「そっかー・・じゃあさ、玲央君は?」

図星をつかれてビクっと肩を震わせる千夏。

・千夏モノローグ(あの花火大会のあと・・)


○回想。花火の後自宅で父母に頭を下げる玲央。

・玲央「ちーちゃんとお付き合いする事を許してください」

・千夏ママ「あらま〜♡もちろんよ〜。ね?お父さん!」
と喜ぶ母の隣で父は青ざめている。

・千夏パパ「だ、ダメだよそんなの! ちーちゃんには交際なんてまだ早いよ!」

・千夏ママ「は? 何いってるのよお父さん。千夏はもう高校二年生なのよ。そろそろ彼氏くらいできる年頃だし、玲央君以上の良い子なんかそうそういる訳ないでしょ? どうするのよ、そのうち千夏が売れないバンドマンとか自称動画配信者のフリーターとか連れて来たら。反対したお父さんのせいよ?」

・千夏パパ「ぐ・・わ、わかったよ・・」
ガックリ肩を落とす父と、小躍りする母&玲央。

・千夏モノローグ(こうして無事付き合うことになった私達だけど・・学校では騒ぎになるのを避けて、アズちゃんと爽介以外には秘密にしている)


○回想終わり。再び教室の風景へ。

・千夏「れ、玲央君とは家族だから・・そういうのはないよ」

・友達A「まぁそっかぁ・・正直玲央君と歩いてても、妹にしか見えないもんね」

サクッと胸に言葉の矢が突き立つ。


○玲央や梓らと下校する千夏達。その千夏と玲央の後ろ姿に、校舎から憎悪の視線を向けている杏奈。千夏らは電車のホームへと移動。

・梓「混んでるなー」
・千夏「他の学校もみんな今日終業式ぽいね」

そこへ他校の女生徒が玲央を見つけて「ねーねー、あの人カッコいい!」と噂している声が聞こえる。

・女生徒達「羨ましい〜。どっちか彼女かな?」「そりゃ右の子でしょ」
梓の方が彼女と予想する声を聞きつけ、またちょっと傷つく千夏。電車の窓に映る自分と玲央の不釣り合いぶりを見て、はぁと溜息をつく。

・千夏(確かに妹にしか見えん・・玲央君はどう思ってるんだろう。女の子として好きって言ってくれたけど・・正直色気とは無縁だし、やっぱり家族愛的なものの延長なんじゃないのかな?)

混み合う電車の中で、うーんと考え込んでしまう千夏。しかしその時、隣に立っていた玲央が、こっそりと手を繋いできた。緊張で赤面して固まってしまう千夏。チラリと玲央の方を伺うと、玲央は優しい笑顔で千夏を見つめている。

・千夏(かっこよすぎる彼氏と一つ屋根の下の夏休みが始まる・・持つかな心臓)

ドキドキを膨らませる千夏。


(10話おわり)
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