家賃滞納の保証にクラスのイケメンを預かりました

6話

○学校の風景

・千夏モノローグ(中間テストが終わり、私は過去最高順位を更新。アズちゃんと奏介も無事に補習を免れ、部活に打ち込む日々へと戻って行きました。そして一息ついた頃、学校で一二を争うくらいの熱いイベントがやってきます。────球技大会です。)

○ギャラリー多い体育館。バスケの試合が行われている。梓が華麗なドリブルからシュートを決めると、女子から盛大な声援が。

・ギャラリーの女子達「キャー藤原さんサイコー!」「梓せんぱーーい!」

沸く梓ファンを見つめる千夏とクラスメイト。

・友達A「相変わらずアズの女子人気すごいな」

・千夏モノローグ(アズちゃんの活躍で女子バスケは順調に勝ち上がっています。私もがんばらないと)

拳を握り意気込む千夏。しかし参加したドッジボールで瞬殺されてしまう。

・千夏モノローグ(意気込みだけではどうにもならないようです)
しゅんとする千夏。「男子サッカー見に行こー」という声を聞く。

・千夏モノローグ(男子サッカー・・たしか玲央君が出るやつだ。そして対戦相手は・・奏介達のクラスです)

 華麗なトラップからシュートを決める奏介。奏介コールが巻き起こる。

・友達A「あー・・やばい。もう3点差だよ」
・友達B「奏介出すの反則だろ。無双しすぎ」
・千夏心の声(奏介すごい!かっこいい!・・でも・・がんばって、玲央君!)

しかしそこへカウンターから、ちょうどいい位置にいた玲央のところへクロスがあがる。

・千夏心の声(玲央君のところにボールが・・玲央君、がんばれ・・!)

緊迫の一瞬、しかし玲央は盛大に空振りし、周囲をずっこけさせる。

・千夏モノローグ(負けました)


○撤収するギャラリー

ギャラリー「てか、山添君てあんまりスポーツ得意じゃないのかな」「でもちょっとカワイイ」「結局うちらのクラスで勝ち残ってるの梓達の女子バスケだけじゃね」「笑うしかない」

霧散する生徒の波の中で、奏介が千夏を見つけて声をかけてくる。

・奏介「おい、ちー! ちゃんと見てたか俺のスーパーハットトリック」

躊躇なく千夏の肩に手を回す奏介。千夏は頬を赤らめる。

・千夏「み、見てたよ・・外せって思いながら」

・奏介「は!? なんでだよ!?」

・千夏「当たり前でしょ! 敵チームなんだから!」

・千夏心の声(私がいつでも奏介を見てるとか思わないでほしい・・まぁ当たってはいるんだけどさ。でもちゃんとウチのクラスに勝って欲しいって、本気で応援してた)

千夏と奏介の後ろで、仲良さそうな二人を見つめている玲央。

・玲央心の声(奏介君はカッコいいな・・)


○玲央の妄想。(奏介みたいに千夏に上から声をかける自分のイメージ)

・玲央「おい千夏! ちゃんと見てたか僕のこと」

・千夏「見てたよ・・豪快に空振りしたとこもね」

・玲央「うるさいな。千夏の応援が足りないからだろ」

妄想終了。あまりの違和感に思わず立ち止まり、(なんか違う・・)と苦悶の表情を浮かべる玲央。後ろから玲央に声をかける梓。

・梓「ちょっと。いきなり立ち止まらないでよ。ぶつかりそうになったわ」

・玲央「あ・・藤原さん」

・梓「何首傾げてんのアンタ。考え事?」

・玲央「いや、奏介君はカッコいいなと思って。自分もあんな風だったらと想像してみたんですけど・・あまりの違和感に耐え難くなりまして」

・梓「ああ・・それぞれキャラってのがあるからね」
若干呆れた視線を送る梓。

・玲央「そうですよね。あんな風にカッコよくなりたいと思っても、一朝一夕にはいきませんよね」

・梓「いや・・あんたはあんたで、もう十分無双してると思うけどね・・」

・玲央「むそう? ああ、そうですね。夢想してます」

・梓心の声(なんか無双の意味取り違えてんな多分・・)

・梓「ねぇ。・・なんで奏介みたいになりたいって思ったの?」

・玲央「え?」

・梓「あんたってもしかして・・千夏のこと好きだったりする?」

・玲央「はい。ちーちゃんの事はもちろん大好きです」

・梓「だからそれってさ。友達としての『好き』なの? それとも・・異性としての『好き』なの?」

一瞬頭の中が真っ白になり、動きを止める玲央。

・玲央「・・分かりません・・。僕、友達も恋人もいたことないので」

・梓心の声(千夏から聞いてはいたけどマジで悲しいなコイツ)
呆れた視線で玲央を見つめる梓。先日のSNSの隠し撮り投稿の一件の騒動を思い返す。

・梓心の声(いい奴なんだとは思うけど・・千夏には奏介の方が合ってる)

・梓「友達とか家族としてならさ・・余計な横槍入れずに見守っといてやってよ。あいつらずっとあんな感じだけど・・結局昔から両想いなの。そのうちなる様になると思うからさ」

梓の言葉に何故かショックを受ける玲央。

・玲央「はい・・わかりました・・」

・玲央心の声(なんだろう。このモヤモヤした感じ)

感じたことのない感情を覚えた玲央は、その後スマホで「友達 彼氏 優先順位」「彼氏と友達の違い」などを検索。「7割が彼氏を優先と回答」や「キスや性的な関係に進めるかどうか」「この先もずっと一緒に居たいと思えるかどうか」「他と違って特別」「一番大事だと思うかどうか」などの回答を確認する。

・玲央「特別・・。一番、大事・・」

一人呟く玲央。




○球技大会終了後の教室

・クラスメイト男子「みんなで打ち上げいこー!」

・クラスメイト達「行く行くー!」「このためにやってるようなもんだもんな」「部活休みって先生達も分かってるよねー」と口々に騒いでいる。

・クラスメイト男子「山添は? 行く? 行かない?」

・玲央「あ・・僕は・・」

・千夏「行こうよ!」

思わず横槍を入れてしまう千夏。

・千夏「こんなときくらい・・山添君も、いこ・・?」

・玲央「・・うん。行こうかな」

レアキャラ玲央の参加表明に沸くクラスメイト。その中で梓は、複雑そうな表情を見せる。



○打ち上げのカラオケ。玲央のところへ群がる女子。

・女子達「玲央君何の曲入れる〜?」「いつも何歌うの〜?」

・玲央「いつも? ごめん僕、カラオケって初めてなんだ」

・女子達「初めて!?」

・玲央「音楽も詳しくないし。今日はみんなを応援しながら勉強させて貰うね」

マラカスを両手に意気込む玲央に、多少呆気に取られる女子達。それを(大丈夫かな)とハラハラしながら眺める千夏。

・女子達「あ、じゃあさ、玲央君、一緒に写真とろー!」「あ!ずるーい私も!」「私もお願い! できれば2ショットで!」「SNSあげたら超いいねつきそう」

・男子A「あ、それなら俺もお願い〜! 山添目当ての女からDM届きまくるかも」

・男子B「プライドってもんがないのかお前は」

・千夏「ちょっと待ってよみんな、それは・・」

止めようとした千夏しかしその前に、梓の怒声が飛ぶ。

・梓「いい加減にしろよ、お前ら。それじゃ山添、仕事じゃん。
山添を変なマウント取る為に使うなよ。周りがそんな風だから、こいつはいつも参加しないんだろ。ちゃんと普通の友達として扱ってやれよ」

シーンと静まり返る一同。そこへ玲央が笑顔で答える。

・玲央「ごめんね、みんな。・・実は勝手にSNSに投稿しないようにって事務所に言われてるんだ。この間、八木沼さんにもすごく迷惑かけちゃったし・・。だから藤原さんはそう言ってくれたんだよね。ありがとう。
でも僕はクラスの皆と一緒に写真に映って、皆の記憶の中にも残れるなら嬉しいって思ってるんだ。皆にも気を遣わせちゃって悪いんだけど、SNSに投稿するのは控えて貰えるかな?」

・クラスメイト達「ご、ごめんね山添君。うちらそんなつもりじゃ・・ただ珍しく来てくれたから浮かれてて」「俺もごめんな! どうしてもモテたかったんだ!」「仕切り直して皆で写真撮ろ!」

空気は和解ムードに。写真を撮った後、梓の隣に座る玲央。

・玲央「ありがとね藤原さん」
・梓「わざわざこっち来んなよ」
・玲央「ごめん迷惑だった?」
・梓「別に迷惑ってわけじゃないけどさ」

・男子A「山添ー。さっきの写真送るからMINE交換しよ」
・玲央「うん・・どうやるの?」
・男子A「なんで!? 中身おじいちゃんなの!?」

皆と話す玲央を見つめる千夏。周りでは「山添君て別に怖い感じじゃないね」「うん。てゆうかむしろ天然?」と噂されている。話の内容は隣同士で座る玲央と梓の件へ。
・友達A「ねぇねぇ。意外とあの二人ってお似合いじゃない?」
・友達B「確かに。アズってちょっと怖い感じだけど、美人ではあるもんね。クールビューティーってやつ?」
・友達A「人気者同士だし、かなりアリかも!」

盛り上がるクラスメイト達の横で、複雑な心境になる千夏。

・千夏モノローグ(何でだろ。玲央君に友達が出来て喜ばしいところの筈なのに・・なんでか胸がモヤモヤする。この気持ちは・・何?)



○カラオケを終えて会計へと向かう一同。一階へ降りる途中、一階に屯していた奏介達のグループを見つける。

・友達A「あれ? あれって二組の人達じゃない? あっちも打ち上げか」

・千夏心の声(奏介!?)

・奏介の友達A「なんで告白断っちゃったんだよ? 可愛い子だったのに」

・奏介「なんでって知らない女だったし」

・奏介の友達A「そこはとりあえず付き合うでしょ!? もったいない、俺にくれよ!」

・奏介の友達B「あー、こいつはホラ、嫁がいるから。なんだっけ三組の・・八木沼千夏!」

自分の噂をされている事に気がつき、青ざめる千夏。

・千夏心の声(最悪・・!)

・奏介「別にそういうんじゃねぇよあいつは。ただの幼馴染」

・奏介の友達B「とかいっちゃって、ほんとは好きなんじゃないの〜?」

・奏介「バカ言え。恋愛とかにゃならねーだろ。あんなチビの見た目小学生」

奏介の言葉にショックを受ける千夏。そして周囲も気まずさに青ざめている。

・千夏モノローグ(さ、最悪すぎる・・。失恋したうえに皆の前でこんな・・公開処刑もいいとこだよ! 消えたい! 恥ずかしい・・!)

辛くてぎゅっと胸を抑えた千夏。しかし。

・玲央「いまの言葉、本当ですか?」

いつの間にか下へ降りたらしい玲央が、キレ顔で奏介に詰め寄っていることに気がつく。

・奏介「山添玲央・・? なんでここに」

・玲央「今の言葉は本当かと聞いてるんです」

・奏介「な・・お前には別に、関係ねーだろ」

・玲央「関係なくないです。君がちーちゃんを要らないというのなら・・僕がちーちゃんの彼氏に立候補します」

驚愕する一同。唖然とする千夏。


(6話おわり)
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