家賃滞納の保証にクラスのイケメンを預かりました
9話
○映画館で爽介に告白される千夏。
・爽介「お前が好きだ。千夏」
・千夏モノローグ(そのときにはっきり自覚した。マックで玲央君を悪く言った爽介に反論したときも、勉強する約束を断って家に戻ったときも、球技大会の応援だって・・私はもう随分前から、爽介より玲央君を優先してた)
涙を流す千夏。それを見て、驚く爽介。
・千夏モノローグ(さっきも本当は、玲央君を追いかけたかった。玲央君を傷つけたくない。玲央君の気持ちに応えたい。爽介を傷つけることになっても────)
・千夏「ごめん・・ごめんね爽介。私、玲央君のことが好きなの」
泣きながら告白を断る千夏。爽介は溜息をつく。
・爽介「だと思ったわ、バカ」
・千夏「え・・」
・爽介「まったくお前はよ。俺に気なんか使ってないですぐ追いかければ良かっただろ。振られたからって俺とお前が幼馴染だってことは変わんねーよ」
・千夏「爽介・・ありがとう!!」
勢いよく頭を下げてお礼を言ったあと、走り出す千夏。それを見送った爽介は、深い溜息をつく。脳裏に浮かんだのは「誰かに取られても知らないから」と言った梓の言葉。
・爽介「アホか、俺は・・」
○商業施設内のベンチに座る玲央と杏奈。落ち込む玲央を杏奈は励ます。
・杏奈「しょうがないよ玲央君。二人は両想いなんだし、こればっかりはどんなに真剣に想ったところで、相手の気持ちの問題だから」
そう言いつつ、(危なかった〜。あわやカップル成立の大惨事になるところだった)と肝を冷やす杏奈。
・杏奈(でも今ので爽介とかいう奴も必死になるだろうし? 向こうは向こうで纏まっててくれるといいんだけどな。とりあえず、もうちょっと楔を打っておかないと)
・杏奈「ねぇ玲央君。玲央君には辛い話かもしれないけどさ・・玲央君と千夏ちゃんは一緒に暮らしてるわけだし・・どちらか一方が好意を向けるのって、家庭崩壊に繋がったりしないのかな、なんて・・」
・玲央「え?」
・杏奈「だってさ、女の子からしてみたら、自分に好意を寄せてる男の子が同じ家で暮らしてるって・・ちょっと怖いじゃん。その・・襲われたらどうしよう、とかさ」
・玲央「襲う・・僕はそんなつもりじゃ・・!」
・杏奈「そりゃ玲央君がそんな事する人じゃないって私はわかってるよ! でも千夏ちゃんの立場になって考えてみると微妙だなって・・それに爽介君も、自分の彼女と同級生が一緒の家に住んでて、しかも好意を寄せられてるって・・彼の立場になって考えると不安しかなくない?」
・玲央「そう・・そうですよね・・。眞野さんの言う通りです。あの時、爽介君と一緒にいるちーちゃんを見たら、衝動が抑えられなくなってしまって・・。でもそれって、一方的に自分の気持ちを押し付けてるだけですもんね。僕、自分のことしか考えてませんでした」
ほくそ笑む杏奈。
・杏奈「ごめんね、きつい事言っちゃって・・でも言いにくいことこそ、はっきり言うのも必要かなって」
玲央の手に自分の手を重ねる杏奈。
・杏奈「私は玲央君の味方だよ」
・玲央「眞野さん・・」
・杏奈「私でよければ・・ずっと玲央君の側にいるから・・」
頬を染め、玲央に健気さをアピールする杏奈。しかし玲央はあっさりそれを断る。
・玲央「あ。それは大丈夫です。僕は家で勉強がありますし、それにちーちゃんが戻ってきたら、彼女が気に病まないですむような形で、ちゃんと謝罪しなくては。眞野さん、貴重なご指摘ありがとうございました」
ペコリとお辞儀をし、サクッと去っていく玲央。置き去りにされた杏奈は、一人怒りを燃やす。
・杏奈「そーこーはー、私の健気さにちょっと心惹かれるとこだろぉ・・。この私をどこまでバカにするつもり? こうなったらどんな手を使ってでも、あいつらを幸せになんかさせないから!」
○家に戻って来た千夏。呼吸を整え、玲央に自分の気持ちを伝えようと、玲央の部屋のドアをノックする。ドアが開き、顔を出す玲央。
・玲央「ちーちゃん? 早かったね」
・千夏「あ、うん。映画終わったし、その・・」
緊張でドキドキと胸が高鳴り、上手く言葉に出来ない千夏。
・千夏(ど、どうしよう・・『好き』ってちゃんと伝えなきゃいけないのに、緊張するよぉ)
・千夏「あ、あのっ」
・玲央「もしかして僕が変なこと言ったせい?」
言葉が被り、驚いて顔をあげる千夏。
・玲央「さっきはごめんねいきなり。僕、ちーちゃん達と一緒に暮らせる今の生活がすごく楽しくて幸せで・・やっと出来た家族を爽介君に取られるんじゃないかって、不安になっちゃったんだ。本当に自分勝手だったなって反省してる。でももう大丈夫だから気にしないで。・・僕はちーちゃんが大好きだけど、それは『家族としての好き』だから」
玲央の言葉にショックを受ける千夏。千夏に気を使わせまいと、笑顔を向ける玲央。
・玲央「爽介君には明日僕からちゃんと説明するよ。これからはちゃんと、二人のこと応援するから安心して」
・千夏「あ・・うん」
○自室に戻り、ベッドで泣く千夏。
・千夏(告白できなかった・・本当の気持ち、伝えられなかった。・・私の意気地無し。だけど変に関係が崩れるくらいなら、これで良かったのかも)
玲央は玲央で自室で暗い顔をしている。
・玲央(これでいいんだよね・・ちーちゃんには幸せになってもらわなきゃ・・)
・二人のモノローグ(これからも家族として側にいられるなら・・)
○学校の屋上。爽介を呼び出した玲央は、謝罪する。
・玲央「昨日は二人のこと邪魔しちゃって、ほんっとーにごめん!」
・爽介「・・は?」
・玲央「家族より恋人を優先させるものだって読んだばかりだったから・・ちーちゃんを取られるみたいな気持ちになっちゃったんだ。僕、ずっと兄弟が欲しくて嬉しくて・・でもそれが普通なんだもんね。これからは爽介君とちーちゃんのこと、ちゃんと応援するから・・」
・爽介「おい」
玲央の言葉を止める爽介。怒りの形相で玲央に掴みかかる。
・爽介「ふざけんなお前。お前の千夏への気持ちはそんなもんなのかよ? 落ち込んで損したわ」
掴んだ玲央の服を離して、立ち去ろうとする爽介。最後に玲央を睨む。
・爽介「ぜったい諦めてやんねー」
○学校の風景。
・千夏モノローグ(月日は流れ、期末テストも終わり、もうすぐ夏休みがやってこようとしています)
・千夏と玲央「花火大会?」
・千夏ママ「そー! 家族みんなで見に行くってのはどお?」
・玲央「僕、花火大会って行ったことないです」
目を輝かせる玲央。
・千夏ママ「あら〜じゃあ尚更じゃないのぉ〜。ねぇ千夏?」
・千夏ママ心の声(てゆうかどうなってるのかしらこの子達・・ちょっと前はいい感じと思ってたのに、最近はなんだかよそよそしいっていうか・・爽ちゃんやあの女豹に変な茶々入れられる前に話を纏めましょう!)
・千夏「ああ、うん・・お母さんも玲央君も行きたいなら」
・千夏ママ「あら楽しみねぇ〜。千夏も久しぶりに浴衣でお洒落させちゃおうかしらぁ〜」
・千夏「おかーさんなんか張り切りすぎじゃない?」
・玲央「僕は楽しみだな。ちーちゃんの浴衣姿」
・千夏「・・うん」
○学校の休み時間。
・友達A「花火大会行かない? 期末も終わったし大人数でパーっとさ」
固まってしまう千夏。
・千夏小声「どうしよう玲央君・・お母さん張り切ってたし、断った方がいいよね?」
・玲央「そ、そうだね・・」
そのとき廊下を通りがかった爽介達に声をかける友達A。
・友達A「あ! 爽介たち〜! みんなも花火大会行かなーい??」
気がついた爽介は、その場で返事をせずにわざわざ玲央の前で千夏の頭に腕をのせ、玲央を睨みつける。
・爽介「行く」
・友達AB「な、なにあれ。修羅場?」「もしやマジで千夏の取り合い・・?」
爽介の睨みに怯んで目を逸らす玲央。
・玲央「行ってきなよちーちゃん。僕はママさんとパパさんと三人で行くからさ」
玲央の言葉に内心ショックを受ける千夏。
・友達A「え〜。玲央君来ないのぉ〜?」
・玲央「お家の人と約束してるんだ。ママさん楽しみにしてたみたいだし。でも花火は見に行くから、会うかもしれないね」
・友達A「そっか、そうだね。会えたら合流しちゃう?」
暗い顔の千夏。それを不機嫌そうに見つめる爽介。
○花火大会当日。混雑する出店の立ち並ぶ通りを歩く玲央・母・父
・千夏ママ「なんっっで千夏は別行動なのよ!? あの裏切り者〜!!」
・玲央「すいませんママさん・・僕と一緒に回って、また盗撮とかされたら迷惑かけちゃいますし・・やっぱり僕だけじゃ楽しくないですか?」
・千夏ママ「そんなことないわよ玲央君!? (二人をくっつけようとしてるのに、それじゃ意味ないじゃない・・!)こうなったらヤケ食いよ! 爆買いしましょう!」
・玲央「わー、僕こういうところで食べ物買うの初めてです!」
・千夏ママ「なんですって!? なんでも買ってあげるわよ玲央君! ねぇパパ!」
・千夏パパ「そうだね。でもほどほどにね・・」
そこへ声をかけてきたのは浴衣でめかしこみ一際輝く杏奈。
・杏奈「玲央君!? 奇遇だね! 良かったら一緒に回らな」
・玲央「すいません、今日は家族水入らずなので」
食い気味であっさり断る玲央。青ざめる杏奈と、人知れずガッツポーズを決める母。
○同じく屋台を回る千夏達。騒ぐ友達らの後ろの方で、暗い顔をしている千夏に声をかける爽介。
・爽介「またあいつのこと考えてんのかよ」
・千夏「あ・・あはは」
・爽介「どこがいいんだよ。あんな日和ってるチキン野郎」
・千夏「えーと・・悲しすぎて放っておけないところかな?」
・爽介「なんだそれ・・」
・千夏(玲央君花火初めてだって言ってたな・・もしかして屋台で食べ物買うのも初めてかも。・・玲央君の初めての花火・・一緒に見たかったなぁ)
空を見上げた千夏。
一方の玲央も空を見上げている。
・千夏ママ「そろそろ始まるかしらねぇ」
・千夏パパ「そうだね。見えやすい場所に移動しようか」
三人の手には買い込んだ食べ物の袋が吊り下がっている。するとそこへ母が千夏の姿を見つける。
・千夏ママ「あ! アレ千夏じゃない!? 隣にいるのは・・爽ちゃん・・?」
並んで歩く千夏と爽介を目の当たりにして、玲央はまた胸をしめつけられる。家族の輪を乱さないよう、それを押さえ込もうとしたのだが・・
・千夏ママ「いいの玲央君!?」
・玲央「え・・?」
・千夏ママ「爽ちゃんに千夏取られちゃうわよ! それでいいの? 玲央君!」
母の言葉に背中を押された玲央は走り出す。
・千夏ママ「玲央君・・これ・・!」
母が咄嗟に投げたのは狐のお面。それを受け取りグッドポーズを決め走る玲央。
・千夏ママ「きゃーーー♡ ほんとに行ったわよパパ!! 千夏羨ましすぎる!」
・千夏パパ「ど、どういうこと・・? 一体何が起きて?」
・千夏ママ「何言ってんのよパパ! 恋よ、恋!!」
○千夏の手を引き攫う玲央。そのまま祭りの雑踏の中を走り抜ける二人。
(9話おわり)
・爽介「お前が好きだ。千夏」
・千夏モノローグ(そのときにはっきり自覚した。マックで玲央君を悪く言った爽介に反論したときも、勉強する約束を断って家に戻ったときも、球技大会の応援だって・・私はもう随分前から、爽介より玲央君を優先してた)
涙を流す千夏。それを見て、驚く爽介。
・千夏モノローグ(さっきも本当は、玲央君を追いかけたかった。玲央君を傷つけたくない。玲央君の気持ちに応えたい。爽介を傷つけることになっても────)
・千夏「ごめん・・ごめんね爽介。私、玲央君のことが好きなの」
泣きながら告白を断る千夏。爽介は溜息をつく。
・爽介「だと思ったわ、バカ」
・千夏「え・・」
・爽介「まったくお前はよ。俺に気なんか使ってないですぐ追いかければ良かっただろ。振られたからって俺とお前が幼馴染だってことは変わんねーよ」
・千夏「爽介・・ありがとう!!」
勢いよく頭を下げてお礼を言ったあと、走り出す千夏。それを見送った爽介は、深い溜息をつく。脳裏に浮かんだのは「誰かに取られても知らないから」と言った梓の言葉。
・爽介「アホか、俺は・・」
○商業施設内のベンチに座る玲央と杏奈。落ち込む玲央を杏奈は励ます。
・杏奈「しょうがないよ玲央君。二人は両想いなんだし、こればっかりはどんなに真剣に想ったところで、相手の気持ちの問題だから」
そう言いつつ、(危なかった〜。あわやカップル成立の大惨事になるところだった)と肝を冷やす杏奈。
・杏奈(でも今ので爽介とかいう奴も必死になるだろうし? 向こうは向こうで纏まっててくれるといいんだけどな。とりあえず、もうちょっと楔を打っておかないと)
・杏奈「ねぇ玲央君。玲央君には辛い話かもしれないけどさ・・玲央君と千夏ちゃんは一緒に暮らしてるわけだし・・どちらか一方が好意を向けるのって、家庭崩壊に繋がったりしないのかな、なんて・・」
・玲央「え?」
・杏奈「だってさ、女の子からしてみたら、自分に好意を寄せてる男の子が同じ家で暮らしてるって・・ちょっと怖いじゃん。その・・襲われたらどうしよう、とかさ」
・玲央「襲う・・僕はそんなつもりじゃ・・!」
・杏奈「そりゃ玲央君がそんな事する人じゃないって私はわかってるよ! でも千夏ちゃんの立場になって考えてみると微妙だなって・・それに爽介君も、自分の彼女と同級生が一緒の家に住んでて、しかも好意を寄せられてるって・・彼の立場になって考えると不安しかなくない?」
・玲央「そう・・そうですよね・・。眞野さんの言う通りです。あの時、爽介君と一緒にいるちーちゃんを見たら、衝動が抑えられなくなってしまって・・。でもそれって、一方的に自分の気持ちを押し付けてるだけですもんね。僕、自分のことしか考えてませんでした」
ほくそ笑む杏奈。
・杏奈「ごめんね、きつい事言っちゃって・・でも言いにくいことこそ、はっきり言うのも必要かなって」
玲央の手に自分の手を重ねる杏奈。
・杏奈「私は玲央君の味方だよ」
・玲央「眞野さん・・」
・杏奈「私でよければ・・ずっと玲央君の側にいるから・・」
頬を染め、玲央に健気さをアピールする杏奈。しかし玲央はあっさりそれを断る。
・玲央「あ。それは大丈夫です。僕は家で勉強がありますし、それにちーちゃんが戻ってきたら、彼女が気に病まないですむような形で、ちゃんと謝罪しなくては。眞野さん、貴重なご指摘ありがとうございました」
ペコリとお辞儀をし、サクッと去っていく玲央。置き去りにされた杏奈は、一人怒りを燃やす。
・杏奈「そーこーはー、私の健気さにちょっと心惹かれるとこだろぉ・・。この私をどこまでバカにするつもり? こうなったらどんな手を使ってでも、あいつらを幸せになんかさせないから!」
○家に戻って来た千夏。呼吸を整え、玲央に自分の気持ちを伝えようと、玲央の部屋のドアをノックする。ドアが開き、顔を出す玲央。
・玲央「ちーちゃん? 早かったね」
・千夏「あ、うん。映画終わったし、その・・」
緊張でドキドキと胸が高鳴り、上手く言葉に出来ない千夏。
・千夏(ど、どうしよう・・『好き』ってちゃんと伝えなきゃいけないのに、緊張するよぉ)
・千夏「あ、あのっ」
・玲央「もしかして僕が変なこと言ったせい?」
言葉が被り、驚いて顔をあげる千夏。
・玲央「さっきはごめんねいきなり。僕、ちーちゃん達と一緒に暮らせる今の生活がすごく楽しくて幸せで・・やっと出来た家族を爽介君に取られるんじゃないかって、不安になっちゃったんだ。本当に自分勝手だったなって反省してる。でももう大丈夫だから気にしないで。・・僕はちーちゃんが大好きだけど、それは『家族としての好き』だから」
玲央の言葉にショックを受ける千夏。千夏に気を使わせまいと、笑顔を向ける玲央。
・玲央「爽介君には明日僕からちゃんと説明するよ。これからはちゃんと、二人のこと応援するから安心して」
・千夏「あ・・うん」
○自室に戻り、ベッドで泣く千夏。
・千夏(告白できなかった・・本当の気持ち、伝えられなかった。・・私の意気地無し。だけど変に関係が崩れるくらいなら、これで良かったのかも)
玲央は玲央で自室で暗い顔をしている。
・玲央(これでいいんだよね・・ちーちゃんには幸せになってもらわなきゃ・・)
・二人のモノローグ(これからも家族として側にいられるなら・・)
○学校の屋上。爽介を呼び出した玲央は、謝罪する。
・玲央「昨日は二人のこと邪魔しちゃって、ほんっとーにごめん!」
・爽介「・・は?」
・玲央「家族より恋人を優先させるものだって読んだばかりだったから・・ちーちゃんを取られるみたいな気持ちになっちゃったんだ。僕、ずっと兄弟が欲しくて嬉しくて・・でもそれが普通なんだもんね。これからは爽介君とちーちゃんのこと、ちゃんと応援するから・・」
・爽介「おい」
玲央の言葉を止める爽介。怒りの形相で玲央に掴みかかる。
・爽介「ふざけんなお前。お前の千夏への気持ちはそんなもんなのかよ? 落ち込んで損したわ」
掴んだ玲央の服を離して、立ち去ろうとする爽介。最後に玲央を睨む。
・爽介「ぜったい諦めてやんねー」
○学校の風景。
・千夏モノローグ(月日は流れ、期末テストも終わり、もうすぐ夏休みがやってこようとしています)
・千夏と玲央「花火大会?」
・千夏ママ「そー! 家族みんなで見に行くってのはどお?」
・玲央「僕、花火大会って行ったことないです」
目を輝かせる玲央。
・千夏ママ「あら〜じゃあ尚更じゃないのぉ〜。ねぇ千夏?」
・千夏ママ心の声(てゆうかどうなってるのかしらこの子達・・ちょっと前はいい感じと思ってたのに、最近はなんだかよそよそしいっていうか・・爽ちゃんやあの女豹に変な茶々入れられる前に話を纏めましょう!)
・千夏「ああ、うん・・お母さんも玲央君も行きたいなら」
・千夏ママ「あら楽しみねぇ〜。千夏も久しぶりに浴衣でお洒落させちゃおうかしらぁ〜」
・千夏「おかーさんなんか張り切りすぎじゃない?」
・玲央「僕は楽しみだな。ちーちゃんの浴衣姿」
・千夏「・・うん」
○学校の休み時間。
・友達A「花火大会行かない? 期末も終わったし大人数でパーっとさ」
固まってしまう千夏。
・千夏小声「どうしよう玲央君・・お母さん張り切ってたし、断った方がいいよね?」
・玲央「そ、そうだね・・」
そのとき廊下を通りがかった爽介達に声をかける友達A。
・友達A「あ! 爽介たち〜! みんなも花火大会行かなーい??」
気がついた爽介は、その場で返事をせずにわざわざ玲央の前で千夏の頭に腕をのせ、玲央を睨みつける。
・爽介「行く」
・友達AB「な、なにあれ。修羅場?」「もしやマジで千夏の取り合い・・?」
爽介の睨みに怯んで目を逸らす玲央。
・玲央「行ってきなよちーちゃん。僕はママさんとパパさんと三人で行くからさ」
玲央の言葉に内心ショックを受ける千夏。
・友達A「え〜。玲央君来ないのぉ〜?」
・玲央「お家の人と約束してるんだ。ママさん楽しみにしてたみたいだし。でも花火は見に行くから、会うかもしれないね」
・友達A「そっか、そうだね。会えたら合流しちゃう?」
暗い顔の千夏。それを不機嫌そうに見つめる爽介。
○花火大会当日。混雑する出店の立ち並ぶ通りを歩く玲央・母・父
・千夏ママ「なんっっで千夏は別行動なのよ!? あの裏切り者〜!!」
・玲央「すいませんママさん・・僕と一緒に回って、また盗撮とかされたら迷惑かけちゃいますし・・やっぱり僕だけじゃ楽しくないですか?」
・千夏ママ「そんなことないわよ玲央君!? (二人をくっつけようとしてるのに、それじゃ意味ないじゃない・・!)こうなったらヤケ食いよ! 爆買いしましょう!」
・玲央「わー、僕こういうところで食べ物買うの初めてです!」
・千夏ママ「なんですって!? なんでも買ってあげるわよ玲央君! ねぇパパ!」
・千夏パパ「そうだね。でもほどほどにね・・」
そこへ声をかけてきたのは浴衣でめかしこみ一際輝く杏奈。
・杏奈「玲央君!? 奇遇だね! 良かったら一緒に回らな」
・玲央「すいません、今日は家族水入らずなので」
食い気味であっさり断る玲央。青ざめる杏奈と、人知れずガッツポーズを決める母。
○同じく屋台を回る千夏達。騒ぐ友達らの後ろの方で、暗い顔をしている千夏に声をかける爽介。
・爽介「またあいつのこと考えてんのかよ」
・千夏「あ・・あはは」
・爽介「どこがいいんだよ。あんな日和ってるチキン野郎」
・千夏「えーと・・悲しすぎて放っておけないところかな?」
・爽介「なんだそれ・・」
・千夏(玲央君花火初めてだって言ってたな・・もしかして屋台で食べ物買うのも初めてかも。・・玲央君の初めての花火・・一緒に見たかったなぁ)
空を見上げた千夏。
一方の玲央も空を見上げている。
・千夏ママ「そろそろ始まるかしらねぇ」
・千夏パパ「そうだね。見えやすい場所に移動しようか」
三人の手には買い込んだ食べ物の袋が吊り下がっている。するとそこへ母が千夏の姿を見つける。
・千夏ママ「あ! アレ千夏じゃない!? 隣にいるのは・・爽ちゃん・・?」
並んで歩く千夏と爽介を目の当たりにして、玲央はまた胸をしめつけられる。家族の輪を乱さないよう、それを押さえ込もうとしたのだが・・
・千夏ママ「いいの玲央君!?」
・玲央「え・・?」
・千夏ママ「爽ちゃんに千夏取られちゃうわよ! それでいいの? 玲央君!」
母の言葉に背中を押された玲央は走り出す。
・千夏ママ「玲央君・・これ・・!」
母が咄嗟に投げたのは狐のお面。それを受け取りグッドポーズを決め走る玲央。
・千夏ママ「きゃーーー♡ ほんとに行ったわよパパ!! 千夏羨ましすぎる!」
・千夏パパ「ど、どういうこと・・? 一体何が起きて?」
・千夏ママ「何言ってんのよパパ! 恋よ、恋!!」
○千夏の手を引き攫う玲央。そのまま祭りの雑踏の中を走り抜ける二人。
(9話おわり)