イノセントラブ
私服を時計が置いてあるテーブルの下に閉まった時、来店を知らせる内線が鳴った。

予約の詳細が書かれたメモを見る。
【 17:00〜本指名タナカ様 90分】
入店時から週に2回のペースで通ってくれている客だ。

口角を上げてドアを開けると、中年のサラリーマンが立っている。

「タナカさん、また会いに来てくれてありがとう。嬉しい」

タナカさんは頬を緩ませる。

「ユキちゃん、すっかり人気者だね」

タイマーを90分にセットしてスーツをハンガーにかけていると、マットレスの上に座っていたタナカさんが口を開いた。

「タナカさんがこうやって会いに来てくれるからだよ。いつもありがとう」

下半身だけタオルで隠したタナカさんの隣に座り、太ももに手を置いて微笑む。

「初めは18才の未経験って謳い文句に惹かれて指名したんだけど、ユキちゃんはそんな謳い文句は必要ない位に可愛いし気遣いも出来るし、とにかくまた会いたいって思っちゃうんだ」

少し恥ずかしそうに言い終えたタナカさんの唇が近づいてくる。

「タナカさん、キスとプレイはイソジンとシャワーをしてからね」

ニコッと笑顔を作りながらタナカさんの乾燥した唇を人差し指で軽くつつき、手を繋いでシャワールームへと向かった。

ーーーーーーーーー

狭い部屋に狭いシャワールームから湯気が立ちこめている。

「今日も良かったよ。帰りに受付で次の予約を取っておくからね」

タナカさんはプレイ終わりのシャワーを浴びたあと、ワイシャツのボタンを閉めながら言った。

「ありがとう。また次に会えるのを楽しみにしているね」

ベビードールを着直して、キュッと口角を上げてタナカさんを見つめるとタイマーが鳴った。

内線の受話器を手に取る。
「お客様お帰りです」これがプレイ時間終了の合図。

すぐにドアの外からノック音が聞こえた。

ドアを開けると内勤が立っている。

キャストと客が密接する空間はプレイルームのみ。
帰る客は内勤が店の扉まで送って行くシステムになっている。

「ありがとうございました。気をつけて帰ってね。またね」

お辞儀をしてから手を振ると、靴を履いて狭い廊下に出たタナカさんがまた頬を緩ませた。

バタン、とドアが閉まる。

タナカさんは私の胸元に射精した。

プレイ終わりのシャワーできちんとボディソープで洗ったのに、まだ胸元が汚れている気がした。

次の予約がある。汚いなんて考えている時間が勿体無い。

髪の毛をブラシで整えて、次の客を迎える支度をした。
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